ガバメントクラウドの概要と自治体情報システム標準化の20業務
デジタル庁は2025年度末までの導入を目指している 「ガバメントクラウド」。各自治体が標準準拠システムを構築するための基盤となり、行政のデジタル化を促進しています。本記事では、ガバメントクラウドを活用することによる地方公共団体にとってのメリット、また、標準準拠システムの対象となる20業務と関連業務について解説します。
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ガバメントクラウドとは
近年、政府や自治体においてデジタル化が進んでいます。その中で特に重要な取り組みが、デジタル庁が主導する「ガバメントクラウド」です。これは、政府共通のクラウドサービスの利用環境で、デジタル庁が指定したクラウド事業者(CSP)の環境上に構築され、各自治体は標準準拠システムをガバメントクラウド上に構築することを、努力義務としています。構築するシステムの標準仕様や技術要件、非機能要件、運用におけるベストプラクティスが定義され、システムの標準化を実現することや、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指しています。
地方公共団体がガバメントクラウドを活用するメリット
ガバメントクラウドへ移行することで、次のような利点を得ることができます。
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コスト削減
- サーバーやOS、アプリケーションの維持管理にかかる初期投資を大幅に削減できる
- 物理サーバーや個別アプリケーションにかかっていた運用コストを抑制できる
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システム構築の迅速性と拡張性
- 業務の拡大や組織改編に伴うシステムの柔軟な変更が可能できる
- 開発サイクルが加速し、新規サービスの立ち上げや既存サービスの改善が迅速に行い、住民に価値を提供できる
- 季節などによる需要変動にも柔軟に対応可能できる
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データ連携の容易化
- 各自治体の業務システムが標準化されることで、データの形式や連携方法が統一され、移行が容易になる
- 他部署や他自治体とのデータ連携がスムーズに行え、行政サービスの効率化や住民サービスの向上が期待できる(ワンスオンリーの促進)
- 自治体間の広域連携が促進され、業務の効率化やサービスの利便性向上を図ることができる
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セキュリティの強化
- 高度なセキュリティ対策が施されたクラウドサービスを利用することで、安全性が向上できる
- クラウド事業者が最新の脅威に対応するためのセキュリティパッチやウイルス対策ソフトの更新や運用監視を行うため、各自治体が個別に対策を講じる必要がなくなる
- 外部からのサイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを低減することができる
このように、ガバメントクラウドは行政サービスの質を向上、職員の負担低減を図ることができ、行政のデジタル化が進むことで、得られる価値は多岐にわたります。
[ 参考 ]
- ガバメントクラウド (デジタル庁)
- ガバメントクラウド 技術マニュアル (デジタル庁)
- 地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化 (デジタル庁)
- 地方自治体のガバメントクラウド活用に関する検討状況 (総務省)
ガバメントクラウド導入の努力目標と支援
デジタル庁は、自治体におけるデジタル化を推進するため、ガバメントクラウドの導入を2025年度末までの努力目標として掲げています。
導入推進のための具体的な支援策・サービス
自治体のガバメントクラウドを後押しするため、政府主導の支援策のほか、民間企業が導入支援サービスを提供しています。
助成金制度の創設
総務省が主導して、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)は「デジタル基盤改革支援基金 」を設け、次の取り組みへの補助が行われています。
- ガバメントクラウド上のシステムへの移行準備経費(現行システムの概要調査・比較分析、移行計画作成等)
- システム移行経費(データ移行、文字の標準化等) など
地方公共団体情報システム標準化・共通化に向けた総務省としての主な取組について(総務省自治行政局デジタル基盤推進室)
技術支援
デジタル庁では、GCAS(ガバメントクラウド活用支援サービス)を提供しており、詳細なマニュアルを提供しています。
また、実際のシステム構築・運用においては、事業者の役割ごとに「統合運用管理補助者」「運用管理補助者」「ネットワーク構築運用補助者」「ASP」 の各民間企業が協力し携わっています。
標準化の推進
ガバメントクラウドの利用にあたって、標準化されたシステムやプロセスを導入するために、各種仕様書が定義され、公開されています。
次項でご紹介する「標準準拠システム」の各仕様書は下記ページからダウンロードができます。
[ 参考 ]
自治体情報システム標準化の対象となる20業務
デジタル庁において、自治体における基幹業務の統一・標準化を行い、ガバメントクラウドに移行するよう定められています。以下に、標準化の対象となる20業務を示します。
「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」に定められている20業務
- 児童手当
- 子ども・子育て支援
- 住民基本台帳
- 戸籍の附票
- 印鑑登録
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 戸籍
- 就学
- 健康管理
- 児童扶養手当
- 生活保護
- 障害者福祉
- 介護保険
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療
- 国民年金
各業務と、管轄省庁をまとめると、図のようになります。
詳細については、デジタル庁の下記ページ、総務省の資料をご覧ください。
地方公共団体情報システム標準化・共通化に向けた総務省としての主な取組について(総務省自治行政局デジタル基盤推進室)
関連システム
前項の20業務のシステムに加え、ガバメントクラウド上には、ガバクラ上に構築することが効率的と判断したシステムについても 「関連システム」として構築可能です。
関連システムは、標準準拠システムと業務データのファイル連携等を行うシステムの他、標準準拠システムと同じくガバメントクラウドに構築することが効率的であると地方公共団体が判断するシステムについて対象とする。
地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用について【第2.1版】 (デジタル庁)
関連システムとは、「共通機能」などとも呼ばれ、ファイル連携機能や、申請管理、ユーザー管理、セキュリティなどの各システム、バックアップ・リカバリ、運用監視、BI、API管理などの各ツールなどが含まれます。
ガバメントクラウドの関連ページ
Kyriosブログでは、ガバメントクラウド関連の記事を随時更新中です。その他の記事は、下記よりご覧ください。
ガバメントクラウド支援サービス
また、Kyriosではガバメントクラウド導入に際して、自治体やASP事業者向けの支援サービスも提供しています。詳細は、下記よりご覧ください。
ガバメントクラウドへの導入においては、さまざまな情報を理解し、複数の事業者と関わりながら進めていく必要があります。Kyriosサイトやブログでは今後もさまざまな視点から情報発信をしたいと思います。ぜひ参考にしていただき、ガバメントクラウド移行の助けになれば幸いです。
※本記事の内容は、編集者が各省庁等のWebサイトをもとに再編集を行ったものです。
この記事に記載された内容は記事公開日時点のものです。