変化に迅速に対応する「スクラム」の開発手法の魅力 | 研修参加レポート
ITプロジェクトの成功率や変化への対応力の向上を目指し、多くの企業がアジャイル手法を取り入れ始めています。特に「スクラム」は、柔軟かつ迅速に成果を出すフレームワークとして注目を集めています。今回、Kyriosを提供するJTPの社員がスクラムの基礎を実践的に学ぶ研修「Registered Scrum Team Member® Training」に参加しました。本記事では、そこで学んだスクラムの基礎と気づきをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.なぜスクラムがいま注目されているか?
- 2.スクラムの基本概念
- 2.1.スクラムの三大要素
- 2.2.アジャイルマニフェスト
- 2.3.経験的プロセス
- 3.スクラムのフレームワーク
- 3.1.スプリント
- 3.2.スクラムの構成要素:3-5-3
- 3.3.ワークショップ「紙飛行機ゲーム」
- 4.おわりに
なぜスクラムがいま注目されているか?
変化のスピードが速いビジネス環境において、ビジネスニーズに対して迅速かつ柔軟に製品開発に対応することが求められるとともに、企業にとって競争力に大きく影響を与えるファクターとなっています。
そこで注目されているのが、スクラムです。従来のウォーターフォール型開発は計画に依存し、変化への対応が難しい一方、スクラムは短いスプリントでの反復的な開発を重視し、継続的なフィードバックを通じて改善を図ります。また、チームの自己管理やコラボレーションを促進し、メンバーの主体性を引き出すことで、プロジェクトの成功率を向上させることができます。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、スクラムはソフトウェア開発だけでなく、さまざまな業界でのプロジェクト管理にも応用され、広く支持されています。これにより、スクラムは現代のニーズに合った効果的な手法として注目を集めています。
スクラムの基本概念
従来からのウォーターフォール型開発が「定義されたプロセス」であるのに対し、アジャイルは「予測不能な変化を管理するプロセス」です。この記事の中では、代表的な考え方や、要素についてご紹介していきたいと思います。
スクラムの三大要素
スクラムは一言でいえば、「デリバリー(価値を届ける)のフレームワーク」です。大きく分けて3つの考え方からなります。
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軽量なフレームワーク
「スプリント」と呼ばれる短いサイクルを回し、「動く成果物」を作ることを意識する
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リーン
無駄を排除し、効率的なプロセスを追求する手法で、製造業やサービス業での生産性向上を目的としています。顧客価値を最大化するために、必要なものだけを最小限に作ることを重視する
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アジャイルの視点
柔軟で迅速な手法で、顧客のニーズに応じた変更を歓迎し、短期間で価値あるプロダクトを提供することを目指す
アジャイルマニフェスト
アジャイルの価値を明文化したもので、複数の言語に翻訳されています。
プロセスやツールよりも個人と対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェア*を、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを
認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。
*オリジナルでは、ソフトウェアとなっていますが、Scrum Inc.では、アジャイルの取り組みにおいては、あらゆる領域に適応できるため、「包括的なドキュメントよりも動くプロダクトを」と変更しています。
[ 引用元 ]
アジャイルマニフェスト
経験的プロセス
スクラムやその他のアジャイル手法で採用されるプロジェクト管理と意思決定の基本的なアプローチとして、「経験的プロセス」と呼ばれる、実際にプロセスを経験しながら計画・実行・改善を繰り返す手法が取られます。
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透明性(Transparency)
プロセスや進行中の作業が関係者全員に明確に見える状態を確保します。これにより、全員が同じ基準でプロジェクトを理解し、意思決定を行えます。例として、カンバンボードやスプリントレビューでの成果物の公開が挙げられます。
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検査(Inspection)
進行中の作業やプロセスを定期的にチェックし、目標に対する進捗を評価します。この検査は、チームの方向性や作業方法が正しいかを確認するために行われます。スクラムにおいては、デイリースクラムやスプリントレビューが検査の機会となります。
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適応(Adaptation)
検査で得た結果をもとに、必要に応じて計画やプロセスを調整します。不確実性や変化に迅速に対応することで、プロジェクトが常に顧客のニーズに合致するようにします。例として、スプリントレトロスペクティブで議論された改善点の実施があります。
すべてのイベントにおいて、検査と適応が行われることにより、透明性が確保され、チームはリアルタイムで問題を特定し改善することが可能になります。これによって、計画と実際のプロジェクト状況の差異を最小限に抑え、チームのパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。
スクラムのフレームワーク
スクラムにはシンプルかつ合理的なフレームワークが定義されています。概要はScrum Inc.による動画でも紹介されています。
Introducing the Scrum Framework (See description for updated video) (Scrum Inc.)
スプリント
スクラムのフレームワークでは、スプリントと呼ばれるサイクルを、1~4週間の短期間で回していいきます。スプリントの中では、成果物を作成し、レビューを行い、改善し、成果物をアップデートさせていき…というサイクルを一日の中でも回し、ゴールへと近づけていきます。
スクラムの構成要素:3-5-3
スプリントを回していく中で、3つの役割・5つのイベント・3つの作成物が決められています。
役割
スクラムには「プロジェクトマネージャー」という役割はなく、以下の3つの責任をそれぞれが果たすことで、全員で「プロジェクトマネージャー」の責任を果たすという考え方があります。それぞれの役割に上下関係はなく、スクラムチーム全員で協力しながらゴールを目指して活動することが、最大の特徴でもあり、スピード感を生み出す機動力にもなっています。
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プロダクトオーナー
プロダクトオーナーは「何を」(What)に責任を持ち、プロダクトビジョンを策定し、ゴールを設定して達成を目指すことです。そのために、プロダクトバックログを作成・整理し、リリース計画を管理して顧客価値を提供します。バックログは「実行可能」で「必要なタイミング」で整備され、全ての活動はビジョンとゴールに向けて進められます。顧客への価値提供が最優先に考えます。
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スクラムマスター
スクラムマスターは「プロセス」に責任を持ち、スクラムチームと組織に奉仕するリーダーとして、チームのパフォーマンス向上やスクラムイベントのファシリテーションを行います。また、割り込みからチームを守り、作業を可視化し、障害物を取り除きながらプロセスを改善します。これにより、チームや組織がゴールを達成できるよう支援します。
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開発者
開発者は「どのように」(How)に責任を持ち、プロダクトオーナーが定めたWhatを基に顧客に価値を届けるインクリメントを作成します。スプリント計画を立て、ゴール達成のために状況に応じて調整を行い、完成の定義を守ることで品質を確保します。また、専門家として互いに責任を果たし、チームで協力します。
イベント
スプリントの中で、定められたタイミングに、次のイベントを実施し、活動の内容を逐一見直し、決定します。
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スプリント
通常1~4週間のサイクルで、一定期間に達成可能な目標を設定し、集中して設計・開発・テストに取り組みます。
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スプリントプランニング
スプリントの最初に行い、チームで目標とタスクを設定します。
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デイリースクラム
15分程度の短いミーティングで、進捗を確認し課題を共有します。
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スプリントレビュー
スプリント終了後に成果物をレビューし、ステークホルダーからフィードバックを得ます。
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スプリントレトロスペクティブ
プロセスの改善点を議論し、次のスプリントに活かします。
また、5つのイベントに加え、次のイベントも重要な役割を果たします。
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バックログリファインメント
プロダクトバックログを継続的に整備・改善するプロセスです。プロダクトバックログアイテム(PBI)の明確化や、優先順位の整理、見積もりの更新などを行います。
作成物
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プロダクトバックログ
スクラムチームによって達成したいタスク「プロダクトバックログアイテム(PBI)」の集まりをリスト化したもので、プロダクトオーナーが優先順位を決定します。
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スプリントバックログ
特定のスプリント期間内にチームが達成するために取り組む作業のリストです。スプリントプランニングミーティングの際に作成され、スプリントの目標(Sprint Goal)を達成するために必要なタスクを具体的に定義します。
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プロダクトインクリメント
スプリント終了時点での成果物で、チームで定義した「完成の定義」(Definition of Done) を満たしたもので、動作し、顧客が利用可能な状態のプロダクトである必要があります。
ワークショップ「紙飛行機ゲーム」
研修中に行われた「紙飛行機ゲーム」では、実際にスクラムを体験する場として、参加者が制約の中で紙飛行機を作成しました。5分間のスプリントを3回繰り返し、スプリントごとにレビューと振り返りを実施しました。
慣れるまではこのスピード感に苦戦しましたが、このプロセスを通じて、制約の中で価値ある成果を迅速に提供する方法やチーム全体で改善を進めることで、次第に品質と効率が向上する体験、またそのマインドを共有することの重要さを体感することができました。
おわりに
今回の研修を通じて、アジャイルの本質は「動くものを迅速に届ける」ことで、早期に顧客価値を提供し、フィードバックを基に改善を続ける重要性を実感しました。
また、アジャイルの成功には手法に加えて、「素早く改善をしつづける文化」を醸成することが不可欠で、個人やチームの主体性を育むことがプロジェクト成功に繋がることも実感できました。今回の研修でスクラムの本質と応用方法を深く理解し、この学びをKyriosの開発プロジェクトに取り入れて、お客様に寄り添った開発を目指していきたいと考えています。
今回参加した研修
今回参加した研修は、Scrum Inc.が提供する「Registered Scrum Team Member® Training」という研修です。体験型学習を通じてスクラムの基礎を1日で習得し、共通言語を持ちながらスムーズにスクラムを開始できることを目指す研修で、実践的に学ぶことができました。
関連するサービス
Kyriosでは、モダナイゼーションサービスを提供しております。アジャイルを取り入れた開発体制で、お客様のプロダクト開発をサポートします。詳細は下記をご覧ください。