SI企業におけるAI駆動開発による全社的プロセス改革 | AI駆動開発カンファレンス2025秋講演レポート
シンプレックス株式会社によるAI駆動開発カンファレンス2025秋でのセッション、「AI駆動開発実践!SI企業における開発プロセス再開発の取り組み紹介」では、AIを活用した開発プロセス再設計に取り組む中で得た知見、具体的な実践事例、そしてAI活用を成功させるために必要な施策について紹介されました。事例なども取り上げられ、全社的なAI導入において、非常に参考になる内容でした。
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これまでの取り組みとその効果
シンプレックスでは、まず、2023年7月にCoE(Center of Excellence)チームを設立し、部門や案件を横断した取り組みをはじめ、AI活用のノウハウを集約を行いました。全社員が使えるAIツール環境の整備や、セキュリティを担保したデータアクセス体制の構築、社内ポータルやSlackチャンネルでの活用事例・ガイドラインの共有、勉強会やイベントの開催など、現場へのAI浸透を促進してきました。
この結果、AI導入による開発工程での工数削減や、AI活用事例の増加といった成果が現れています。しかし、個人やチーム単位の最適化に留まり、ノウハウの全社共有やAI活用の再現性・安定化には課題が残りました。
課題を受けての新たな取り組み
こうした課題を踏まえ、AIを「組織的に活用する仕組み」へと昇華させるため、シンプレックスでは次のような施策を行いました。
- プロンプトやAIツールをチーム共通で利用できる仕組みを整備
- 要件定義~テスト・運用保守まで、全工程をAI活用前提で見直し
- 個別カスタマイズよりもコンテキストや評価データの整備・標準化を優先
- AI導入による工数削減効果を数値で把握し、削減分の余力を新規案件や顧客価値向上に再分配
これにより、AIの効果を組織全体で再現し、事業成長に直結する仕組みづくりを目指しています。
社内取り組みの事例
組織全体でのAI活用を進める取り組みでは、次のような効果が得られました。
事例1:クラウドリフトプロジェクトでのAI活用
オンプレミスシステムをAWSへ移行するプロジェクトでは、AIを活用してドキュメントやソースコードを一元管理。チーム全体でプロンプトや設計判断の記録(ADR)を共有し、AIによる設計・実装レビューを徹底しました。
<効果>
- 開発タスクの平均33%の工数削減を実現
- 削減分は追加ニーズ対応や顧客リレーション強化に活用
事例2:案件独立型のAI駆動開発
過去のWebアプリ開発案件をAI駆動で再現し、コストや期間を定量評価。AIエージェントが自律的に実装・テスト・レビューを行うスケーラブルなプロセスを構築しました。
<効果>
- 人間の介入を最小限に抑え、タスクの自動化・効率化を実現
- 今後の他案件への横展開や省力化にもつながる
効果的なAI駆動開発のために必要な施策
AI駆動開発を組織全体で成功させるためには、次のような施策が不可欠といえます。
- 全社的なAI活用基盤の整備誰もが安全かつ容易にAIツールを利用できる環境を用意し、セキュリティやデータアクセスの課題をクリアすること。
- ノウハウとコンテキストの標準化・共有プロンプトや活用事例、設計判断の記録などを組織で共有し、再現性と拡張性を高めること。
- 開発プロセス全体の再設計要件定義からテスト・運用まで、AI活用を前提としたプロセスに見直し、個人依存や属人化を防ぐこと。
- AI導入効果の定量測定と余力の再活用工数削減などの成果を数値で把握し、浮いたリソースを新たな案件や価値創出に再配分する仕組みづくり。
これらの施策を推進することで、AIの価値を最大限に引き出し、組織全体の生産性向上と事業成長につなげることができます。
さいごに
シンプレックスのAI駆動開発への取り組みは、AI技術を単なる個人やチームの効率化に留めず、全社的なプロセス改革へと発展させている点が非常に印象的でした。CoEの設立やAI活用基盤の整備、ノウハウの標準化・共有など、組織全体でAIの恩恵を最大化するための仕組みづくりが着実に進められています。実際に、クラウドリフトや案件独立型のプロジェクトでは、工数削減やタスク自動化といった具体的な成果が出ており、AI導入の効果が明確に示されていました。また、AI導入によって生まれた余力を新たな案件や顧客価値向上に再配分するという考え方は、今後の事業成長にも直結すると感じました。AI駆動開発を全社で推進するためには、基盤整備やプロセス再設計、ノウハウの共有が不可欠であることも改めて実感させられました。
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