AI活用で変わる組織のソフトウェア開発 | AI×組織でのチーム開発を成功に導く方法 [前編]
AIを開発に取り入れる、「AI駆動開発」。AI活用により、開発の生産性が飛躍的に向上するため、急速にツールが発展し、組織での導入も進んでいます。「AI×組織でのチーム開発を成功に導く方法」前編では、組織でAIを導入したチーム開発を成功させるための総論的な視点やトレンド、そして現場で直面しがちな課題とそのアプローチについて解説します。まずはAI活用の全体像を把握し、組織としてどのような方向性を持つべきかを考えてみます。
後編はこちら
本記事は、AI駆動開発カンファレンス 2025秋でのセッションをもとに再編集したものです。
講演動画はこちら
ソフトウェア開発におけるAI活用の現状
近年、ソフトウェア開発の現場ではAI(人工知能)の活用が急速に進んでいます。AI関連ツールは500種類以上が登場し、世界中の開発者によって多様なユースケースで利用されています。特にコーディング領域では、すでに30%以上の開発者がAIツールを取り入れ、その効果を実感しています。個人開発者がAIを駆使して全工程を一人で担う「一人ユニコーン企業」も誕生するなど、AIによるソフトウェア開発の変革は、私たちの想像を超えるスピードで進んでいます。
AIツールは日々進化し、開発現場における適用範囲も広がっています。コーディングの自動化、テストやバグ修正、UIデザイン、要件定義、運用・保守に至るまで、ほぼすべての工程でAIの活用が可能となっています。
AI活用のメリットとしては、開発の生産性が飛躍的に向上することが挙げられます。AIは単なるツールではなく、新たな発見や価値創出の機会を最大化する存在へと進化しています。今後もAIの可能性は広がり続け、うまく活用することで組織や個人に大きな成長のチャンスが生まれます。
組織でAIを導入する意義と現実的な課題
AIが開発に有効であることは、多くの現場で認識されています。すでにAI活用を検討したり、導入を始めている企業も増加しています。しかし、個人開発と異なり、組織や複数人のチームでAIを活用する場合には、さまざまな課題が現れるのも事実です。
代表的な課題は以下の三つです。
チーム開発の生産性が上がらない
AIを導入したものの、期待したアウトプットが得られなかったり、品質に課題が残ったり、逆にエンジニアの負担が増えてしまうケースが見受けられます。これは、AIの活用方法やスキルのばらつき、適切な運用ルールの不在などが原因となり、悪循環に陥ることがあります。
トレンドの変化が速くAI導入が難しい
AI技術の進化は非常に速く、毎週のように新しいツールや機能が登場します。「最新のものを導入した」と思っても、すぐにさらに高性能なツールが登場するため、何を選べばよいか分からなくなることも多いでしょう。導入判断や選定プロセス自体が課題となるのです。
ジュニア開発者の育成が進まない
AIを活用することで、ジュニア開発者でも即戦力として活躍できる場面が増えています。しかし、その一方で、従来は経験を積みながら身につけていた基礎スキルの習得が疎かになり、任せられるタスクが限定的になるリスクも生じています。これにより、組織全体としてのスキル底上げや人材育成が停滞する懸念があります。
AI活用のレベルと段階的導入のすすめ
これらの課題に対するアプローチとして重要なのは、AI活用のレベルや段階を見極めて導入することです。
部分的なAI活用から始める
まずは、始めやすい領域や工程からAIを導入し、その効果や課題を小さく検証することが大切です。たとえば、UIデザインの一部や、コードのベース生成など、工程間の依存度が低いタスクからAIを活用することで、現場への負担を最小限にしつつ導入効果を実感できます。
一連のタスクをAIで実施する
次の段階として、アイディア創出からモック作成、レビューからバグ修正まで、一連のタスクをAIでカバーする形に発展させます。現在のAIツールは、構想から実装までを一気通貫でサポートできるものも多いため、プロセスごとに適用範囲を広げていくことが可能です。
チーム全体でのAI活用
最終的には、チーム全体でAIを活用し、アウトプットの品質や生産性を最大化することが目標です。ただし、メンバー間のAIスキルや活用タイミングにばらつきがあると、期待通りの成果が得られないこともあります。チーム全体での活用ルールやスキル標準化が重要となります。

AIツール選定のポイント:課題や目的に合わせる
AI導入のもう一つの大きな壁は、「どのツールを導入すべきか」の選定です。AIツールは日々進化しており、目新しさやトレンドに惑わされがちですが、組織の課題や目的に合致するユースケースを明確にし、それに適したツールを選ぶことが最も重要です。
企画・要件定義、設計・実装、テスト・リリース、運用・保守など、各工程における課題を洗い出し、それぞれのフェーズでどのようなAI活用が最適かを検討しましょう。最新のツールだからといって無理に導入するのではなく、現場で本当に解決したい課題に応じた選定が、AI活用の成功につながります。

ジュニア開発者の育成とAI活用:長期的視点の重要性
AIの活用によって、ジュニア開発者でも早期にプロジェクトへ貢献できる環境が整いつつあります。しかし、人材育成は長期的な視点で考えるべきです。短期的な成果だけでなく、アーキテクトや設計能力、AI活用スキル、コミュニケーション力、問題発見・解決能力など、将来の開発組織に必要なスキルを計画的に身につけさせることが重要です。
従来のOJTや経験学習に加え、AIを活用した育成手法や、シニア人材の役割見直しによる効率化も有効です。AI活用と人材育成を並行して進めることで、組織の基盤強化と次世代人材の育成を両立できます。

AI時代の開発組織の再定義へ
AIが発展し続ける中で、開発組織の構成や役割も大きく変わりつつあります。今後は、以下のような変化が予想されます。
- 開発組織の再定義と役割分担の見直し
- 内製化や市民開発(Citizen Development)の進展
- 上流工程に強く、AI活用スキルを持った開発者の重要性の増大
これからの時代、単にコーディングやメンテナンスができる人材だけでなく、アーキテクトや設計能力、AI活用スキル、コミュニケーション能力、課題発見・解決力を持つ人材が求められます。組織やチームとして、AI駆動開発を推進する体制づくりが急務となるでしょう。
おわりに
本記事では、AI×組織でのチーム開発を成功させるための現状と課題、そしてそのアプローチについて俯瞰的に解説しました。AI活用は、部分的導入から始めて段階的に広げ、組織の課題や目的に合わせて最適なツールを選定し、人材育成も長期的視点で取り組むことが重要です。
後編では、実際にどのようにAI駆動開発をチームで進めていくのか、具体的な手法や成功のポイントについて詳しくご紹介します。AI時代のチーム開発を成功させるために、ぜひご期待ください。
後編はこちら
AI駆動開発ソリューション daimon
AI駆動開発ソリューション「daimon」は、AI活用の導入から現場への定着まで、お客様の開発組織に寄り添い伴走することを重視した新しいサービスです。AI-Driven Development(開発支援)、AI-Driven Support(導入・改革支援)、AI-Driven Optimization(最適化支援)の3つのメニューを軸に、実践的かつ柔軟にご支援します。単なるツール導入ではなく、「どこにAIを使うのか」「誰がどこまで責任を持つか」「どの指標を見て運用するか」といったルール設計と現場定着までトータルでサポートし、お客様ごとに最適なAI駆動開発を設計し、課題解決まで伴走します。
詳細は下記のサイトをご覧ください!








