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AIとSQLが切り拓くデータ活用人材育成 | Snowflake World Tour Tokyo 2025レポート

Snowflake World Tour Tokyo 2025では、NTTドコモが推進する「データ活用人材育成」と「AIを活用したクラウド移行」の最新事例が紹介されました。巨大な顧客基盤と多様なサービスを持つドコモにとって、データ活用は事業の競争力を左右する重要な要素です。本記事では、ドコモがどのように人材育成とデータ基盤の革新に取り組んでいるのかを、現場の声や最新ツールの活用事例を交えながら詳しく解説します。

 

 

ドコモのデータ活用と人材育成──課題と取り組み

NTTドコモは、1億を超える会員基盤とdポイントを通じて膨大なデータを保有しています。近年、Snowflakeを中核としたクラウド型データ基盤へと移行することで、柔軟性と拡張性を獲得しました。しかし、基盤の拡大とともに、非効率なクエリがコスト増に直結することや、権限設定や外部連携のミスがセキュリティリスクとなること、利用者の急増に伴う適切な教育とガバナンスの必要性など、いくつかの課題も浮き彫りになっています。

Snowflakeは「使いこなせば強力な武器、誤ればリスクに直結する」という両刃の剣です。単なるシステム導入だけでは十分な成果は得られません。こうした状況を受け、ドコモは人材育成を軸にした段階的な取り組みを開始しました。まず情報システム部を対象にした第1フェーズでは、基礎的なデータ活用スキルの習得を目指し、研修プログラムやトライアルを実施。続いて第2フェーズでは、データプラットフォーム部において、より高度な活用や運用スキルの習得を重視しました。これらの研修は、単なる座学ではなく、現場で実際にデータを扱いながら学ぶことに重点を置いています。e-learningやコミュニティサポートも積極的に活用し、知識の定着と実践力の向上を図っています。

また、こうした人材育成の取り組みは、Snowflakeを活用したデータ基盤の移行プロジェクトとも密接に連動しています。現場で必要なスキルを身につけることで、単なる知識習得にとどまらず、実務に直結する能力が養われているのです。

 

Snowflakeへの移行プロセスとAI活用

セッションでは、SQL ServerからSnowflakeへの移行デモが行われました。移行の主な流れは以下の通りです。

  1. SQL Server DBへの接続とカタログ情報取得
    SnowConvertからSQL Serverに接続し、データベースのカタログ情報を収集します。
  2. コード変換の実施
    SQL ServerのコードをSnowConvert上で変換。エラーが発生した場合は、SnowConvert AIが自動的にエラー内容を解釈し、修正案を提示します。
  3. テーブル構造とデータの移行
    オブジェクト(テーブル等)の抽出後、名称変更や構造調整を行い、段階的にコンパイル。移行後はレポートでCode Completeness(コード変換率)を100点満点で表示し、修正が必要な部分もスコア化されます。
  4. コードの検証とテスト
    AIが自動生成したテストケースを使い、移行後のコードやデータが元と一致するかを検証。結果は並列表示され、どの部分に手直しが必要かが一目で分かります。
  5. Power BIの再接続
    BIツールの再接続も自動化されており、移行後のデータウェアハウスにPower BIレポートの接続先を自動で更新できます。既存レポートもそのまま活用可能です。
  6. 移行ハブの活用
    Snowsight内の移行関連ツールや専用UIから、SnowConvert AIやSnowpark Migration Acceleratorなど各種ツールに容易にアクセス可能。移行プロジェクトの管理が効率化されます。

 

SnowConvert AIの強みと現場でのメリット

SnowConvert AIの特徴と現場でのメリットは、以下の通りです。

  • 自動化による工数削減
    AIによるコード変換・修正・検証は、従来の手作業を大幅に削減します。特に、複雑なSQLやETLロジックの変換は、AIがエラーを特定し修正案を提示することで、作業効率が劇的に向上します。
  • 品質と正確性の担保
    変換後のコードやデータの正確性をAIが自動検証するため、移行ミスやデータ不整合のリスクを低減できます。テストケースの自動生成も、品質管理の面で大きな安心材料です。
  • スケーラビリティと拡張性
    Snowflakeへの移行は、あらゆる規模のシステムに対応可能。AIの力を借りることで、数十テーブルから数千テーブルまで、シームレスに拡張できます。
  • 学習支援とコミュニティ
    無料のe-learningやコミュニティサポートが用意されており、移行プロジェクトの知識習得やトラブルシュートも安心です。

 

人材育成の本質──「仕組み」と「環境づくり」が定着の鍵

今回のセッションを通じて特に強く印象に残ったのは、「データ活用人材の育成には仕組みが不可欠である」ということです。単発的な研修や資格取得支援は、知識を点として与えるものにとどまりがちで、継続的にスキルを発揮する環境を整えなければ、実務への定着は難しいと感じます。

重要なのは、講師が知識を一方的に伝えることではなく、誰もが実際にデータへアクセスし、自ら手を動かして学べる環境を作ることです。段階的に人材育成を広げていくアプローチは、この「環境づくり」に直結します。ドコモのような大規模組織では、現場で実際にデータを扱いながら学ぶ仕組みを整えることで、知識が点ではなく線となってつながり、組織全体のスキルレベルが底上げされていきます。

セッションで最も頻繁に登場した言葉が「SQL」だったことも象徴的です。自然言語によるクエリ生成が進展しても、その基盤には常にSQLが存在します。SQLは単なるスキルにとどまらず、今後も組織における“共通言語”としての役割を強めていくでしょう。だからこそ、SQLを誰もが扱えるようになる仕組みを整備することが、データドリブン文化の定着に欠かせません。

Snowflakeのようなプラットフォームを基盤に据えれば、「実務」と「育成」を有機的に結びつけることが可能です。例えば、Snowflakeの資格体系やスキルレベルを人事制度や評価の仕組みに組み込み、日常業務で培った知識をキャリアや評価に直結させる。こうした仕掛けがあれば、学びと実務が循環し、社員のモチベーションと組織の競争力を同時に高められます。

 

  

AI×Snowflakeがもたらす教育・業務の新しいかたち

SnowConvert AIは、クラウドデータ基盤への移行における最大の課題である「手間」「品質」「スピード」を同時に解決する革新的なツールです。これまで手作業で行っていたコード変換や検証、テストケースの作成といった作業はAIによる自動化で大幅に効率化され、品質も担保されます。移行作業だけでなく、学習環境の整備やコミュニティ活用によって、現場の知識定着も促進されます。

データドリブン経営の実現には、勘や経験に依存しない意思決定が求められます。そのための基盤として、Snowflakeは単なる技術的な選択肢ではなく、教育と業務を結びつけるプラットフォームでもあるのです。SQLという共通言語を中心に据え、誰もが学び、使い、成果につなげられる仕組みを持つこと。それがこれからの組織にとって最も重要な投資であると感じました。

今後はAIを活用した教育・実務連携が主流となり、データ活用人材の裾野が広がることが期待されます。移行・育成を検討する方は、SnowConvert AIのデモやe-learningの活用を通じて、AI時代のデータ基盤構築を体感してみてはいかがでしょうか。

  

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