Snowflakeにおけるコスト管理とパフォーマンスの最適化 | Snowflake World Tour Tokyo 2025レポート
2025年9月11日、Snowflake World Tour Tokyoで開催された「Snowflakeにおけるコスト管理とパフォーマンスの最適化」セッションに参加しました。本セッションでは、Snowflakeの最新機能を活用したコスト管理手法や、パフォーマンス最適化の新しいアプローチについて、実践的なデモを交えながら解説されました。
コストの異常検知やタグベースの予算管理など、すぐに現場で活用できるベストプラクティスが多数紹介され、ワークロードの監視・制御の重要性を改めて実感しました。今回は、セッションの中で特に印象的だった11の機能についてレポートします。
目次[非表示]
- 1.Snowflakeの「コスト管理とパフォーマンスの最適化」に対する考え方
- 2.「コスト管理とパフォーマンスの最適化」のための11の機能
- 2.1.コスト異常検知機能(Cost-Based Anomaly Detection)- Public
- 2.2.組織全体の異常検知(View Organization Anomalies)- Public
- 2.3.コスト異常検知ビュー(Cost Anomaly Views)- GA
- 2.4.管理者権限不要のコスト管理(Non-Admin Roles for Cost Management)- GA
- 2.5.組織レベルのクエリコスト分析(Org-Level Query Cost Attribution)- Public
- 2.6.パフォーマンスエクスプローラー(Performance Explorer)- Private
- 2.7.グループ化されたクエリ履歴(Grouped Query History & Query Profile)- Public
- 2.8.詳細なプルーニング履歴ビュー(Detailed Pruning History Views)- GA
- 2.9.コスト最適化インサイト- Private
- 2.10.クエリインサイト- Private
- 2.11.インテリジェントなワークロード最適化- GA
- 3.まとめ
- 4.資料ダウンロード
- 4.1.DWHサービス比較表
- 5.データエンジニアリングサービス
Snowflakeの「コスト管理とパフォーマンスの最適化」に対する考え方
Snowflakeは、クラウドデータプラットフォームの利用拡大に伴い、企業が膨大なデータを効率的に扱いながら無駄な支出を抑え、持続可能なデータ活用を実現するために「コスト管理とパフォーマンス最適化」を重視しています。
従量課金制や柔軟なリソース割り当てを採用し、利用状況に応じてコンピュートやストレージを自動調整することで、無駄なリソース消費を防いでいます。また、クレジット消費の可視化やアラート機能により予算管理も容易になっており、最適なパフォーマンスを維持しつつコスト効率を高めるための各種ツールやベストプラクティスが提供されています。
「コスト管理とパフォーマンスの最適化」のための11の機能
ここからは、セッションの中で紹介された「コスト管理とパフォーマンスの最適化」の中から、11の機能の特徴を簡単に紹介していきたいと思います。
コスト異常検知機能(Cost-Based Anomaly Detection)- Public
- 概要コストの異常を自動検知し、メール通知やドリルダウン分析が可能なダッシュボード機能です。
- 活用メリット予期せぬコスト増加を即座に検知し、通知を受け取ることで、迅速な原因分析と対応が可能になります。
- アクセス方法Snowsightから:管理者 > コスト管理 > 異常
組織全体の異常検知(View Organization Anomalies)- Public
組織アカウントとORGADMINロールを保有していれば、以下の情報を一覧で確認できます:
- 組織全体のコスト異常検知
- コスト変動が大きいアカウントTOP5
- コスト変動が大きいウェアハウスTOP5
この機能により、組織全体のコスト状況を俯瞰的に把握し、問題のあるアカウントや、ウェアハウスを素早く特定できます。
コスト異常検知ビュー(Cost Anomaly Views)- GA
- ANOMALIES_DAILY特定アカウントの異常を把握するビュー(SNOWFLAKE.ACCOUNT_USAGE内)
- ANOMALIES_IN_CURRENCY_DAILY組織全体の異常を把握するビュー(SNOWFLAKE.ORGANIZATION_USAGE内)
これらのビューを活用することで、SQLクエリを用いた柔軟なコスト分析や、独自のダッシュボード構築が可能になります。
管理者権限不要のコスト管理(Non-Admin Roles for Cost Management)- GA
- 概要コスト管理機能に対して、管理者(Admin)権限と閲覧者(Viewer)権限を付与する専用ロール機能です。
- 活用メリットAccount Adminのような強力な権限を付与することなく、必要な範囲でコスト管理機能を利用できます。これにより、セキュリティリスクを最小限に抑えながら、各チームが自律的にコスト管理を行える環境を構築できます。
- 実装方法ペルソナに応じたアプリケーションロールとデータベースロールをカスタムロールに割り当て、該当ユーザーに付与します。
組織レベルのクエリコスト分析(Org-Level Query Cost Attribution)- Public
- 概要組織全体のコスト分析を可能にする新ビュー「QUERY_ATTRIBUTION_HISTORY」により、全アカウントのコストデータを統合して分析できます。
- 活用メリットこれまでアカウント単位でしか追跡できなかった共有リソースのコストを、タグを用いて組織全体で正確に把握し、全社的なコスト最適化と公平な費用配分を実現します。部門間でのコスト配賦や予算管理がより精緻に行えるようになります。
パフォーマンスエクスプローラー(Performance Explorer)- Private
- 概要SQLワークロードのパフォーマンスを可視化・分析するダッシュボード機能です。
- 活用メリットSQLワークロードの健全性を瞬時に把握し、実行時間短縮とコスト削減に繋がる問題を迅速に特定できます。ボトルネックとなっているクエリや非効率な処理を視覚的に確認できるため、チューニングの優先順位付けも容易になります。
- アクセス方法Snowsightから:Monitoring > Performance Explorer
グループ化されたクエリ履歴(Grouped Query History & Query Profile)- Public
- 概要パラメータ化されたクエリハッシュごとにグループ化された履歴表示機能です。
- 活用メリット反復実行されるクエリ、特に低遅延・高ボリュームのクエリ(ハイブリッドテーブル上のクエリなど)のパフォーマンスを効率的に追跡できます。同一パターンのクエリをまとめて分析できるため、システム全体の傾向把握が容易になります。
- アクセス方法Snowsightから:Monitoring > Query History
詳細なプルーニング履歴ビュー(Detailed Pruning History Views)- GA
- 提供ビュー
- TABLE_QUERY_PRUNING_HISTORY:テーブルレベルのプルーニング情報
- COLUMN_QUERY_PRUNING_HISTORY:カラムレベルのプルーニング情報
- 活用メリットプルーニング効果を正確に把握し、自動クラスタリングや最適化サービスなど、パフォーマンス改善の機会を特定できます。データの物理配置を最適化することで、クエリのスキャン量を削減し、パフォーマンス向上とコスト削減を同時に実現できます。
コスト最適化インサイト- Private
- 概要データウェアハウス内のリソース利用状況を自動分析し、無駄なコストの発生箇所と具体的な改善案を提示する機能です。
- 活用メリット専門知識がなくても、簡単にコスト削減の機会を発見し、無駄なクレジット消費を削減できます。AIによる分析で、人間では気づきにくい最適化ポイントも発見できます。
- アクセス方法Snowsightから:Admin > Cost Management > Account Overview
クエリインサイト- Private
- 概要低速クエリのボトルネックを自動検出し、最適な改善案を提案する機能です。
- 活用メリットパフォーマンス調査を迅速化し、アカウント内の要改善クエリを効率的に発見できます。具体的な改善提案により、SQLチューニングの経験が浅いエンジニアでも、効果的な最適化を実施できます。
- アクセス方法
- Snowsightから:Monitoring > Query History > Query Profile
- QUERY_INSIGHTSビュー経由でのプログラム取得
インテリジェントなワークロード最適化- GA
- 概要実行されたクエリを自動分析し、ワークロード固有のメタデータとインデックスを生成することで、プルーニング効率を向上させる機能です。
- 活用メリットマイクロパーティションのプルーニングが強化され、クエリパフォーマンスが大幅に向上します。ユーザーが何もしなくても、システムが自動的に最適化を進めてくれるため、運用負荷を大幅に削減できます。
- 利用方法Gen2またはアダプティブウェアハウスでクエリを実行するだけで、自動的に適用されます。特別な設定や操作は不要で、バックグラウンドで継続的に最適化が行われます。
まとめ
今回のセッションで紹介された機能は、「自動化と知能化の進化」「組織全体の統合管理」「きめ細かな権限管理」の3つの方向性で、Snowflakeのコスト管理と、パフォーマンス最適化を大きく前進させるものでした。
特に印象的だったのは、多くの機能がAIや、機械学習を活用した自動化に重点を置いている点です。異常検知から最適化の実行まで、従来は専門知識と多くの時間を要した作業が自動化され、データエンジニアはより業務に集中できるようになります。
また、組織レベルでの統合管理機能の充実により、大規模組織でのガバナンス強化と、コスト配賦の精緻化が可能になりました。
セキュリティ面では、最小権限の原則に基づいた運用を可能にする専用ロールの導入が注目されます。必要な権限だけを付与できるため、セキュリティリスクを抑えながら業務効率を向上させられます。
これらの機能を適切に組み合わせることで、「コスト削減」「パフォーマンス向上」「運用効率化」を同時に実現できます。













