AIアシスタントからAIエージェントへ :Opening Keynote解説 | AWS re:Invent2025現地レポート
本日は AWS re:Invent 2025の Opening Keynote(基調講演)の様子をお届けします。2025年も、AWS re:Invent はラスベガスで開幕しました。会場には世界中から約 60,000 名が集まり、オンラインでは 200 万近い人が視聴しているとのこと。会場を歩くだけでエネルギーを感じる、という言葉が似合います。昨日の記事では、会場の様子や Kiroお化け屋敷などをお伝えしましたが、今回はいよいよ基調講演です。
今年のキーメッセージ:AIアシスタントからAIエージェントへ
AWS CEOである Matt Garman氏が最も強調していたのは、「AIアシスタントからAIエージェントへの転換」です。
Garman氏は、AIエージェントの登場によって「AIが技術的な驚きから、実際のビジネス価値を生む段階に入った」と述べていました。 さらに、この変化は「インターネットやクラウドに匹敵するインパクトを持つ」とも表現しています。
将来は、あらゆる会社の中に何百万ものエージェントが存在し、医療、カスタマーサービス、給与処理など、あらゆる業務に入り込んでいく――そんな未来像が、かなり具体的に語られていました。
※補足:AIアシスタントとAIエージェントの違い
- AIアシスタント →質問に答えたり文章を作ったりする“会話相手”のイメージ
- AIエージェント → ユーザーの代わりに、ツールやデータにアクセスし、タスクを計画して実行までしてくれるAI

AWSの原点:「Why not?」と自由な発明
このAIエージェントの話とセットで紹介されていたのが、AWS の原点となる考え方です。
- 20年前、開発者はサーバー調達やインフラ運用に時間を取られすぎていた
- 「開発者がインフラではなく発明に集中できたらどうか?」
- 「実験のコストと時間を限りなくゼロにできないか?」
そこで AWS は「Why not?」と自問しながら、「誰もが自由に発明できるようにする」ことをゴールにクラウドを作ってきた、と振り返っています。
今回の基調講演でも、「Why not?」は何度も出てきました。

- なぜ、エージェントを数個ではなく“何百万単位”で使えないのか?
- なぜ、企業ごとのデータを深く理解した専用モデルを、もっと簡単に作れないのか?
こうした問いに対して、AWS がインフラからアプリ層まで新しい部品を用意し、「AI時代の自由な発明の土台」を整えようとしている、というメッセージが通底しています。
3つのレイヤーで見る今年の全体像(ざっくり)
基調講演の内容は非常に盛りだくさんでしたが、全体像は次の3レイヤーで整理できます。
<3つのレイヤー>
- インフラ層(AIを動かす土台)
- NVIDIA GPU や AWS独自チップ Trainium
- 専用のAI基盤を自社データセンター内に置ける「AWS AI Factories」など
- 「巨大なAIや膨大なエージェントを、安定して安く動かすクラウド基盤」を作る話が中心
- モデル層(AIの“頭脳”部分)
- さまざまなAIモデルを選んで使える「Amazon Bedrock」
- AWS製モデルファミリーの新世代「Amazon Nova 2」
- 自社データを学習段階から組み込める「Nova Forge」など
- エージェント/アプリ層(実際に価値を生むアプリ)
- 大規模なエージェント運用基盤「Agent Core」
- 社内データを横断して調査や自動化をしてくれる「Amazon Quick」
- コンタクトセンターをAIで進化させる「Amazon Connect」
- 開発・セキュリティ・運用を自動化する「Frontier Agents」など

一言でまとめると、
「下ではものすごい規模のインフラを回し、真ん中で賢いモデルを用意し、一番上でエージェントが実際に仕事をしてくれる」
という三段構造が、かなりはっきり打ち出された基調講演でした。
AWS上での“再発明”
基調講演では、具体的な企業事例もいくつか紹介されました。技術的な細部というより、「ユーザーやクリエイターにどんな価値を届けようとしているか」という視点が強かったのが印象的です。
Sony:ファンとクリエイターの「感動」をつなぐ
Sony からは、「感動(Kando)」というキーワードが紹介されました。映画・音楽・ゲームなど、さまざまなエンタメを通じてファンの心を動かすことを目指している、という話です。
- PlayStation ネットワークなどを早くから AWS 上に構築し、世界中のプレイヤーに安定した体験を提供してきたこと
- グループ全体のデータを集約する「Sony Data Ocean」で、膨大なデータからインサイトを得ていること
- Bedrock を使った社内向け生成AIや、Agent Core・Nova Forge を組み合わせて、コンプライアンス業務などを大幅に効率化しようとしていること
などが紹介されました。
「ファンとクリエイターの両方を尊重しながら、新しい感動体験をAIで生み出す」という思いが伝わってきます。

AIエージェントが当たり前になると、仕事や開発はどう変わる?
基調講演全体から伝わってきたのは、「社内のあらゆる仕事にAIエージェントが入り込む未来」を前提に話が進んでいる、ということです。

実際の例としては、
- 数週間かかっていた研究開発が、エージェントの自動処理で1時間レベルになる
- 数十人×1年超かかると見積もっていたシステム再設計が、少人数+エージェント活用で数十日で終わった
- セキュリティレビューや運用監視が、専用エージェントによって常時行われる
といった具体的なストーリーが紹介されていました。
ここでのポイントは、「人が不要になる」のではなく、
- エージェント
大量の調査、繰り返し作業、監視・テストなど - 人
設計・判断・優先順位付け・ユーザーとの対話・クリエイティブな発想
という役割分担がはっきりしていくことです。
社内の開発チームで言えば、エージェントがコード修正・テスト・運用対応の部分をで実施ことで、人はプロダクトの方向性やユーザー価値にもっと集中できるようになる――そんな未来像が語られていました。
以上、今回は 基調講演 の内容を「全体像」と「メッセージ」に絞ってお届けしました。明日以降も引き続きラスベガスからお届けしていきますので、ぜひお楽しみにしていてください!

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