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CCoE入門編 ―企業における役割と立ち上げのためのステップ―

最近注目されている「CCoE」について、ご存じでしょうか?「クラウド推進組織」と呼ばれる、組織のクラウド導入を推進していくチームです。クラウドをどのように活用していくかといった戦略の策定や、組織内ルールなどの様々な取り決め、メンバーの教育など、様々な役割を担います。今回は、その役割と、実際にどのようにCCoEを立ち上げていくかについて、見ていきます。

目次[非表示]

  1. 1.CCoEとは?
  2. 2.CCoEの役割
    1. 2.1.クラウド戦略の策定
    2. 2.2.ベストプラクティスの共有
    3. 2.3.トレーニングとサポート
    4. 2.4.イノベーションの推進
    5. 2.5.プロジェクトの進捗確認・評価
    6. 2.6.ガバナンスの確立
  3. 3.CCoEが組織にもたらす効果
    1. 3.1.デジタルトランスフォーメーションの加速
    2. 3.2.コスト削減と効率化
    3. 3.3.セキュリティの強化
    4. 3.4.競争力の向上
  4. 4.CCoEの導入プロセス
    1. 4.1.①現状の分析・目的の明確化
    2. 4.2.②ステークホルダーの特定
    3. 4.3.③チームの編成
    4. 4.4.④戦略・ガイドラインの策定
    5. 4.5.⑤トレーニングとサポート
    6. 4.6.⑥効果の測定と改善
  5. 5.CCoE導入を進める際に考慮すべきこと
  6. 6.さいごに
    1. 6.1.Kyriosのクラウド導入・運用サービス

CCoEとは?

CCoE(Cloud Center of Excellence)とは、「クラウド推進組織」とも言われ、企業がクラウド技術を効果的に活用するために、社内のアクティビティを推進していく専門チームや組織を指します。この組織は、クラウドの導入や運用に関するベストプラクティスを集約・提供し、全社的なクラウド戦略を推進する役割を担っています。企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める中で、CCoEの重要性はますます高まっています。


CCoEの役割

「クラウド導入」と一言にいっても、単にテクノロジーの導入にとどまらず、組織の体制や、習慣やマインドいった様々な環境面での変化をする必要があります。そのため、CCoEが担う役割は非常に多岐にわたります。

クラウド戦略の策定

CCoEは、企業全体のクラウド戦略を策定し、実行するためのガイドラインを提供します。これには、クラウドの利用目的や目標、リソースの配分、セキュリティポリシーなどが含まれます。企業がクラウドを導入する際には、明確な戦略が必要です。

また、新しいクラウドサービスや技術を評価し、企業にとって最適な選択を行うことも大切な任務です。これには、各サービスの機能、コスト、セキュリティなどの比較が含まれます。

ベストプラクティスの共有

組織内でのクラウド技術に関するコミュニティを形成し、知識の共有や情報交換を促進します。そして、クラウド導入に関するベストプラクティスを社内で共有することで、各部署が同じ基準でクラウドを活用できるようになります。例えば、データの管理方法やセキュリティ対策など、具体的な事例を通じて学ぶことができるため、社員の理解も進み、社員同士の連携が強化されることが期待できます。

トレーニングとサポート

CCoEは、社員に対してクラウド技術に関するトレーニングを提供し、必要なスキルを身につけることで、組織全体のクラウド理解のレベルを上げる役割も持っています。また、実際のプロジェクトにおいてもサポートを行い、クラウドの活用を促進します。

イノベーションの推進

CCoEは、企業内でのイノベーションを推進する役割も果たします。新しいクラウドサービスや技術を積極的に取り入れ、業務の効率化や新しいビジネスモデルの構築を支援します。新しい技術の出るスピードが速いため、組織が変化に対応していき、競争力を維持・向上させることができるような推進役を担います。

プロジェクトの進捗確認・評価

CCoEは、クラウド導入プロジェクトの進捗を管理し、各チームとの調整を行います。プロジェクトがスムーズな進行をサポートしたり、必要な情報提供や、ベストプラクティスの共有を行うことで、目標を達成できるように支援します。また、クラウド環境のパフォーマンスを定期的にモニタリングし、問題が発生した場合には迅速に対応します。

ガバナンスの確立

クラウド利用に関するガバナンスモデルを策定し、セキュリティガイドラインとして具体的な設定項目に落とし込んだり、マルチアカウント統制サービスを活用することで、ガバナンスを遵守できるよう、状況を監視します。


CCoEが組織にもたらす効果

デジタルトランスフォーメーションの加速

企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中で、CCoEの役割はますます重要になっています。クラウド技術は、ビジネスの効率化や新しいサービスの提供に欠かせない要素です。CCoEがあることで、企業は迅速に変化に対応できるようになります。

コスト削減と効率化

CCoEは、クラウドサービスの導入によりコスト削減や業務の効率化を図ることができます。適切なクラウド戦略を持つことで、無駄なリソースを削減し、投資対効果を最大化することが可能です。また、ベストプラクティスを共有することや、設定済みの環境を配布することにより、導入にかかる時間も大幅に削減することができます。

セキュリティの強化

クラウド環境では、セキュリティが非常に重要です。CCoEは、セキュリティポリシーの策定やリスク管理を行い、企業のデータを守る役割を果たします。これにより、安心してクラウドを利用できる環境が整います。

競争力の向上

最後に、CCoEは企業の競争力を向上させる要素ともなります。クラウドを活用することで、迅速な意思決定や新しいサービスの提供が可能になります。これにより、市場での競争優位性を保つことができます。また、企業がグローバルに展開する際にも重要な役割を果たします。異なる地域でのクラウド利用に関するガイドラインを提供し、各国の法規制に対応した運用を支援します。これにより、企業は国際的なビジネスを円滑に進めることができます。


CCoEの導入プロセス

CCoEを導入する際のプロセスは組織の規模や状況によっても様々ですが、一例をご紹介したいと思います。

①現状の分析・目的の明確化

まず、現状のクラウド利用状況を分析し、どのような課題があるのかを明確にします。この分析をふまえ、CCoEを設立する目的を明確にします。例えば、コスト削減や業務効率の向上、新しい技術の導入など、具体的な目標を設定し、CCoEの目的や役割を定義します。

②ステークホルダーの特定

次に、CCoEに関与するステークホルダーを特定します。これには、経営層、IT部門、各部署の代表者などが含まれます。これにより、組織全体のニーズを取りこぼすことなく、ニーズを反映することができます。

③チームの編成

CCoEのメンバーを選定し、チームを編成します。各メンバーは、クラウド技術に関する専門知識を持っているメンバーに加え、異なるバックグラウンドを持つメンバーを集めることで、より多角的な視点を得ることができます。前項の「CCoEの役割」で見たように、CCoEのタスクは多岐にわたるため、導入、運用、セキュリティ/ガバナンス、トレーニング、コミュニティへの情報発信など、それぞれの担当を明確にできると良いと思います。

④戦略・ガイドラインの策定

CCoEの戦略を策定します。これには、クラウドの利用目的や目標、リソースの配分、セキュリティなどが含まれます。そして、これらをガイドラインとして策定したり、社内のルールとしてワークフローに落とし込んだり、ポータル上での情報発信をすることで、組織全体でのクラウド利用が統一されていき、効果的なクラウド導入や、ガバナンスの確保が可能となります。

⑤トレーニングとサポート

CCoEは、組織全体のクラウド理解や知識を高めていくための、社員に対するトレーニングや教育を行う必要があります。クラウド技術の理解を深めることで、全体のスキルレベルが向上し、CCoEの活動がより効果的になります。これには、外部の研修を選定し実施することも考えられます。

また、実際のプロジェクトにおいてもサポートを行います。相談窓口などを設けて質問を集約し、FAQとしてポータルで発信したり、ベストプラクティスとしてまとめていくと、より企業内の理解の促進を期待できます。

⑥効果の測定と改善

最後に、CCoEの効果を測定し、必要に応じて改善を行います。KPIを設定して進捗を評価する、社員の理解度を測定するなどにより、CCoEの活動が企業にとって有益であることを確認します。

CCoE導入を進める際に考慮すべきこと

  1. 組織文化の理解
    CCoEを設立する際には、組織の文化を理解することが重要です。新しい技術を導入する際には、従業員の抵抗感が生まれることがあります。コミュニケーションを大切にし、従業員が新しい技術に対して前向きに取り組めるような、普及活動、マニュアルや質問しやすい場の整備といった環境作りが大切です。

  2. 技術の選定
    クラウド技術には多くの選択肢があります。マルチクラウドとして組み合わせて活用することも可能ですが、一度導入が始まると、リプレースすることはコストやリスクもかかるため、最初の方針の影響度は大きいと言えます。そのため、クラウドサービスをしっかりと調査・評価を行い、自社のニーズや持続可能性や拡張性があるかを考慮し、技術を選定することが重要です。

  3. セキュリティの確保
    クラウド環境は、簡単に導入ができる反面、セキュリティのリスクも伴います。アクセス権限の適切な設定を行うなど、クラウド特有のセキュリティが非常に重要です。CCoEは、セキュリティポリシーを策定し、全体のセキュリティを確保する役割も担います。データの保護やアクセス管理について十分に考慮することが必要です。


さいごに

CCoEは、企業がクラウド技術を効果的に活用するための重要な組織です。その役割は多岐にわたり、クラウド戦略の策定からトレーニング、イノベーションの推進まで様々です。今後、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、CCoEの重要性はますます高まることでしょう。組織は、CCoEを活用して競争力を維持・向上させることが求められています。CCoEの導入を通じて、企業全体がクラウド技術を最大限に活用し、持続的な成長を目指していきましょう。

Kyriosのクラウド導入・運用サービス

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