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クラウド移行を成功させる3つのピース「運用設計」「コード化」「FinOps」

クラウド移行を成功させるためには、運用方法やコストに対する不安を解消することが重要です。今回は、AWSに関するセミナーで「仮想化環境からのクラウド移行」を実現するためのポイントについてご紹介した内容から、効率的なクラウド移行と長期的なコスト削減のを実現するための3つのポイントご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.クラウド移行時の不安を解消するための3つのピース 
  2. 2.1. 運用設計による標準化
    1. 2.1.クラウドの柔軟性を活かすカギは運用にある
    2. 2.2.スムーズに進まない標準化、移行時に行うのがおすすめ
  3. 3.2. コード化で運用の省力化
    1. 3.1.移行ごとの手動設定が不要になる
    2. 3.2.IaC(Infrastructure as Code)のツールを活用する
  4. 4.3.FinOpsでコストの最適化
    1. 4.1.コスト管理の可視化がカギ
    2. 4.2.クラウドネイティブ化によるさらなる最適化
    3. 4.3.AWSで利用できるコスト最適化ツール
  5. 5.移行成功例のご紹介:ネスレ日本株式会社
  6. 6.ぜひKyriosにご相談ください


クラウド移行時の不安を解消するための3つのピース 

クラウド移行は多くの企業にとって重要なステップですが、そのプロセスには不安やつまずきやすいポイントもあります。実際に、移行を進めてみたものの、思った通りの結果が得られなかったり、不安が残ったりするケースに遭遇することがあります。

例えば、次のような疑問をお持ちではないでしょうか?

  • 移行後の運用はどうすればいいのか?
  • サーバーの移行は分かったが、台数や規模感はどう決めればいいのか?
  • 各システムの移行を順次進める際に、担当者に大きな負担がかかりすぎないか?
  • 移行するだけで膨大なコストがかかり、実際にコスト削減ができるのか不安…。

これらの疑問や不安を持っている方は少なくありません。そこで、Kyriosでは、これまで数多くのAWS移行サポートを経験してきた中で、成功のために重要な「3つのピース」をご提案しています。「運用設計による標準化」「コード化で運用の省力化」「FinOpsでコストの最適化」の3つの要素を計画に組み込むことで、移行に伴う不安を軽減し、クラウド移行を成功へ導くことができると考えています。


1. 運用設計による標準化

クラウド移行を進める際に、最初に注目すべき重要なポイントの一つが「運用設計の標準化」です。現在のオンプレミス環境や仮想化環境の規模、またはそれぞれの運用状況によって課題は異なるかもしれませんが、クラウド移行を成功させるためには、システムごとに異なる運用方法を定義するのではなく、運用の標準化を図ることが非常に重要です。

クラウドの柔軟性を活かすカギは運用にある

クラウド環境では、ビジネスのニーズに応じて迅速かつ柔軟にシステムを調達できるのが大きな利点です。しかし、システムを新たに構築したり移行するたびに、個別の運用方法を設定してしまうと、クラウドの本来の強みを十分に活かせなくなる恐れがあります。

クラウドのメリットを最大限に享受するためには、まず既存のシステムの移行段階で運用方法を整理し、標準化を行うことが重要です。これにより、新しいクラウドシステムも、既存の標準化された運用プロセスに組み込むことが容易になり、システム全体の管理がシンプルで効率的になります。

スムーズに進まない標準化、移行時に行うのがおすすめ

運用の標準化は一見単純なように思えますが、実際には課題も多く存在します。例えば、現行の運用設計書が存在しなかったり、運用プロセスが各システムでバラバラに行われていたりする場合も少なくありません。こうした状況では、各システム担当者からのヒアリングを通じて状況を把握し、現行の運用を整理する必要があるため、スムーズに進まないこともあります。

だからこそ、標準化運用設計を移行計画に組み込むことが重要です。これにより、移行後の運用効率を高める準備が整い、クラウド環境のメリットを十分に活かせる土台を作ることができます。


2. コード化で運用の省力化

クラウド移行におけるもう一つの大きなポイントは、「運用のコード化」です。システム移行の際にAWSアカウントを新たに構築するのではなく、共通のテンプレートをコード化することで、運用の手間を大幅に省力化することが可能になります。

移行ごとの手動設定が不要になる

クラウド移行においては、セキュリティ設定やネットワーク要件など、共通化できる要素が数多くあります。システムごとに個別の設定をするのではなく、これらをテンプレートとしてコード化することで、システムを移行する際に毎回環境を手動で準備する必要がなくなります。これにより、効率的な移行が可能になるとともに、作業コストも削減できます。

特にVMwareを長く使っていた方には、vCenterサーバの設定をコードで一括展開するイメージが近いかもしれません。vCenterにおける設定や共通化された環境を、コードを流すだけで自動的に展開できるようにするイメージです。これにより、システム移行のたびに設定作業を繰り返す必要がなくなり、大幅に効率化されます。

システムの規模が大きく、移行を段階的に進める場合には、運用のコード化がコスト削減にも大きく役立ちます。個別に設定を行うのではなく、共通のテンプレートを利用することで、作業時間を短縮でき、無駄なリソース消費も防げます。これにより、システム規模の大きさにかかわらず、コストの肥大化を抑えることが可能です。


IaC(Infrastructure as Code)のツールを活用する

このような運用のコード化のアプローチは、「IaC(Infrastructure as Code)」と呼ばれる手法です。

AWSでは、IaCを実装するためのツールCDK(Cloud Development Kit)で、BLEA(Baseline Environment on AWS)*というテンプレートが用意されています。テンプレート化された環境をコードとして管理し、カスタマイズした環境を自動的にデプロイすることができます。

他にも、AWS CloudFormationや、サードパーティーのツールであるTerraformなども、コード化による自動化を支援する主要なツールとして広く使われています。これらのツールを用いることで、クラウド移行や運用の効率化を大幅に進めることができます。

*BLEA:AWSのセキュリティのベストプラクティスを実装した環境を、迅速に実現するためのテンプレートです。詳細は下記のブログ記事をご覧ください。


  AWS環境にセキュアなベースラインを提供するテンプレート「Baseline Environment on AWS」のご紹介 | Amazon Web Services みなさんこんにちは。ソリューションアーキテクトの大村です。 このブログでは、私たちAWS Japanのソリュー […] Amazon Web Services


3.FinOpsでコストの最適化

最後のポイントが、「FinOps」です。

クラウドへの移行を検討する際、最もその目的として挙げられるのが「コスト削減」です。特に、VMからクラウドへの移行を検討する場合、ライセンス費用の削減やインフラ全体の総所有コスト(TCO)の低減を期待する方が多いと思います。

実際、クラウドに移行すると、基本的にはTCOが削減されることが多いです。しかし、移行後の運用方法次第では、クラウドの利便性がかえってコスト増につながるリスクもあります。クラウド環境では、サーバーの追加が非常に簡単で、クリック一つでどんどんサーバーを立ち上げることができますが、これを適切に管理しないと、サーバーの乱立や、いわゆる「野良サーバー」と呼ばれる無駄なリソースが発生し、結果的にコストが増加してしまうことがあります。


コスト管理の可視化がカギ

こうしたリスクを避けるためには、常にコストを可視化し、把握できる状態を維持することが非常に重要です。移行直後の段階では、移行前に行ったサイジングや概算値に基づいて適切なリソースを割り当てていますが、実際の運用が進むにつれて、より最適なインスタンスの選定やコスト効率の良い購入方法が見つかることがあります。このプロセスを「クイックウィン最適化」と呼び、移行直後の運用フェーズで段階的にコストを最適化していくアプローチです。


クラウドネイティブ化によるさらなる最適化

さらに、アプリケーション自体をクラウドネイティブに設計し直すことで、運用全体の最適化を図ることが可能です。例えば、従来のアーキテクチャをそのままクラウドに持ち込むのではなく、マネージドサービスなどを活用し、クラウドの特性を活かしたアプリケーション設計に変更することで、より効率的なリソース管理や自動化が実現します。

このようなアーキテクチャの最適化は、中長期的な対応が必要になることもありますが、結果的には大幅なコスト削減やパフォーマンス向上に繋がります。重要なのは、クラウド移行直後のコスト削減だけでなく、長期的な視点での最適化を常に意識することです。


AWSで利用できるコスト最適化ツール

AWSでは、コスト最適化をするための可視化ツールがいくつか用意されています。AWS Cost Optimization Hubが現在よく使われていると思いますが、その他にも、AWS Cost & Usage Report、AWS Cost Explorer、AWS Compute Optimizer、AWS Trusted Advisor、Amazon QuickSightなどがあります。ぜひ目的に合わせてツールを使用してみてください。


移行成功例のご紹介:ネスレ日本株式会社

 
クラウド移行や最適化の成功例として、ネスレ日本株式会社様の事例をご紹介いたします。Kyriosを利用した、同社のECサイトのオンプレミス環境からクラウドへの移行、そして運用までを含むプロジェクトです。

2019年からクラウド運用のサポートをスタートしましたが、「単なる代行」ではなく、クラウド環境を最適化し、コスト削減を図るための包括的な取り組みとして行われました。現状の分析を基に最適化提案を行い、クラウドリソースの効率的な運用を実現し、結果として、前年と比べてコストを約半分に削減するという大きな成果を上げることができました。

さらに、コスト削減だけでなく、マネージドサービスへの移行も積極的に進めてきました。これにより、運用にかかる負担や費用を大幅に軽減することができ、新しい取り組みやサービスの導入にもスムーズに対応できるようになりました。

  ネスレ日本株式会社 様 オンプレミス環境で運用してきた日本国内の消費者向けECサイト「ネスレ通販」のITインフラをAWSにリホストするプロジェクトを実施。二次対応含めたエンタープライズ向けの詳細な対応がオプションとしてラインアップされたKyriosを利用することで、TCO削減だけでなく、DevOpsプロセス導入やさらなるクラウド最適化に向けた取り組みを強化しました。 Kyrios Webサイト


  ネスレ日本株式会社 様 日本国内の消費者向けECサイト「ネスレ通販」の IT インフラを AWS にリホスト後、クラウド利用料金の高止まりが課題に。AWS Cost Explorer のローデータ(Raw Data)の詳細な分析によってコスト・ドライバーを可視化し、ステージング環境における経年での利用を加味したダウンサイジングを実施したことで、前年比で約44%のコスト削減を達成しました。 Kyrios Webサイト


ぜひKyriosにご相談ください

Kyriosは、クラウドシステムの導入から、その後の運用までをワンストップで支援するサービスです。クラウド移行のサポートにとどまらず、お客様の内製化に向けた運用設計や運用代行、また、運用後の改善提案まで含めたサポートを提供しています。

単なる運用支援にとどまらず、コスト削減に対しても積極的に取り組んでいます。お客様と共に、クラウドの運用の中で利用料を見直し、効率的にコストを削減するための提案を常に行っています。詳細は下記のページをご確認ください。

  サービス Kyrios は、クラウド運用における監視・障害対応・セキュリティ運用・サービスデスク・改善活動をワンストップでサポートするマネージドサービスです。 Kyrios Webサイト


  VM 移行サービス オンプレVM環境を利用しているユーザが、同じ使用感で使い続けられる構成を、クラウド移行のメリットを最大限に活かせる方法を提案します。 Kyrios Webサイト

※本記事は、2024年9月に行われたAWSに関するセミナーでの登壇内容を記事化したものです。

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