Kyrios Blog

 

「FinOps 3.0」とAIエージェントがもたらすコスト最適化の未来 | AWS re:Invent2025現地レポート

ラスベガスで開催されているAWS re:Invent 2025。今年も世界中から多くの参加者が集まり、最新技術の発表や今後のビジョンが語られました。今回は、DoiT社のフィールドCTOであるAmit Kinha氏が語ったクラウドコスト管理の新潮流「FinOps 3.0」と、AIエージェントがもたらす運用の変革についてご紹介します。

 

 

クラウドコスト管理は「自信」の時代へ

これまでのクラウドコスト管理(FinOps)は、「可視化」や「最適化」が中心でした。しかし、今注目されているのは「自信を持ってクラウドを活用する」ことです。

コストの増加を単なる“問題”と捉えるのではなく、「そのコストがどれだけの価値や成果につながっているのか」を背景とともに理解し、積極的な意思決定に活かす時代へと進化しています。

FinOpsの進化

クラウドコスト管理のアプローチは、時代とともに段階的に進化してきました。ここでは、その歴史的な流れを3つのフェーズに分けて整理します。

  • 1.0:可視化
    クラウドの複数アカウントやサービスにまたがるコストを「見える化」し、どこにいくら使っているかを把握することが主な目的でした。
     
  • 2.0:最適化
    コストの内訳が分かった後、「どう最適化するか?」という課題に取り組む段階に進みました。多くの推奨事項が提案されるものの、現場の事情やアーキテクチャに合わず、実行が難しいケースも多く見られました。
     
  • 3.0:背景と自信
    最新のFinOps 3.0では、コストデータをビジネス成果やアーキテクチャの背景・全体像と結びつけ、リアルタイムで「自信を持った意思決定」ができることが重視されています。AIや自動化の進展により、「使った分だけ支払う」ことへの不安が減り、コスト増加も“成長の証”として前向きに捉えられるようになりました。

 

FinOps 3.0の実現を支える3つの柱:データ・効率性・ガバナンス

FinOps 3.0の実現を支えるのが「データ」「効率性」「ガバナンス」の3つの柱です。

  • データ
    コストデータは単なる数字ではなく、ビジネス成果や開発状況と関連づけて分析されます。必要な人に必要なタイミングで、アーキテクチャの背景や全体像を含んだ情報が届く仕組みが整いつつあります。
     
  • 効率性
    最適化案は現場の状況やアーキテクチャを理解した上で提示され、エンジニアがすべてを手動で管理する必要がなくなります。自動化やAIによるサポートが進み、現実的で実行可能な最適化が実現しています。
     
  • ガバナンス
    異常検知やポリシー運用も、単なるアラートの連発から脱却します。「なぜコストが増えたのか」「それは良いことなのか悪いことなのか」といった問いをアーキテクチャや開発状況などの背景ごとに自動で把握し、必要な対策を提案・実行の自動化までされるようになっています。

 

AIエージェントがもたらす変化

AIエージェントは、クラウド運用における「関係者同士で何度も情報をやりとりする無駄な手間」をなくし、スムーズに必要な情報や判断を得られるようにします。

  • 経営層やエンジニアが自然な言葉で質問できる
  • リアルタイムでビジネス成果とコストを結びつけた分析が可能
  • 本当に対処すべきコスト異常だけを検知し、無駄な対応を減らす
  • 最適化案や修復案も自動で提示され、一部は自動実行も可能

このように、クラウドのコスト管理が根本から変わりつつあります。

 

実際の現場では?

例えば新しいサービスをリリースしてユーザーが急増した場合、これまでなら「請求額の急増」に慌てて原因調査を始めることが一般的でした。

しかし今では、AIエージェントが「ユーザー増加による正常なコスト増」と即座に判断し、本当に対応が必要な部分だけを現場に通知します。最適化案や改善案も自動で提示されるため、エンジニアは本来の開発やビジネス価値創出に集中できます。

 

まとめ:クラウドコストは“攻め”の材料に

FinOps 3.0とAIエージェントの進化によって、クラウドコストは単なる「削減すべき数字」ではなく、「ビジネス成果や成長の証」として積極的に活用する材料へと変わっています。

これからのクラウド運用は、「コストを抑える」だけでなく、「自信を持って必要な投資をし、最大限の価値を引き出す」ことが求められます。AWS re:Invent 2025のメインテーマであるAIエージェントは、クラウドコスト管理の分野でも新たな革新をもたらしています。

今後も最新トレンドや現場のリアルな声をお届けしますので、ぜひご期待ください!

Kyriosブログ新着記事

注目サービス


Kyrios 導入事例