CloudFormationとCDKで実現するIaCのセキュリティガバナンス | AWS re:Invent 2024 現地レポート
AWS re:Invent 2024におけるセッション「DOP203 | Governance and security with infrastructure as code」では、インフラストラクチャをコード化する(IaC)ことで、セキュリティガバナンスと生産性の両立を図る方法が紹介されました。本記事では、そのセッションのレポートをお届けします。
インフラストラクチャコード(IaC)の重要性
デプロイとセキュリティの優先性
セッションの冒頭では、インフラストラクチャコードのデプロイと、それに伴うセキュリティの維持が最重要であると強調されました。IaCはクラウド環境の管理を効率化する一方で、以下の課題も存在します。
- 信頼性の欠如:ミスや不適切な設定がシステム全体に影響を及ぼすリスク。
- セキュリティ脆弱性:コードベースでの設定ミスが重大なセキュリティ問題を引き起こす可能性。
- 生産性とのバランス:セキュリティを強化しつつも開発者の効率を損なわない方法の模索。
この課題を解決するために、ツールの活用とベストプラクティスが推奨されました。例えば、削除ポリシーの明示的な定義や依存関係の管理により、IaCの信頼性とセキュリティを向上させることが可能です。これらの具体例として、削除ポリシーがコードの意図しない削除を防ぎ、システム全体の安定性を確保する点が挙げられました。
ポリシー執行ツールの活用
CDK NAGツール
CDK NAGは、AWS CDKユーザー向けのポリシー執行ツールで、セキュリティとガバナンスを維持するために開発されました。このツールは、以下のような機能を提供します。
- セキュリティポリシーの強制:事前に定義されたポリシーを基にコードを自動チェック。
- エラーの迅速な特定:問題箇所を明確に示し、修正を容易に。
開発者向けAIツール
ポリシー執行を支援するAIツールの役割も説明されました。これらのツールは、開発者がベストプラクティスを遵守しつつ、セキュリティとガバナンスを簡潔に維持できるようサポートします。AIはコード中の潜在的なリスクを自動で検出し、早期修正を促進します。
ポリシー執行の重要性
これらのツールは、開発者にベストプラクティスを遵守させ、セキュリティポリシーを一貫して守らせることで、システムの安全性を確保します。特に、AWS CloudFormationやAWS CDK環境での利用が推奨されました。
コードデプロイのベストプラクティス
シンタックスハイライトの活用
セッションでは、シンタックスハイライトがコードデプロイにおいて果たす役割が強調されました。この機能により、以下が可能となります:
- エラーの迅速な特定:構文エラーを視覚的に強調表示。
- 生産性の向上:開発者が迅速かつ効率的にコードを修正。
パフォーマンス最適化の技術
依存関係の管理やリソース仕様の明確な定義といった技術が、コードのパフォーマンスと信頼性を向上させます。例えば、無駄な依存関係を排除することで、コードの実行速度とメンテナンス性が改善されることが示されました。
コードの信頼性向上
不要なコードを防ぎ、システム全体の効率性を確保するために、ベストプラクティスを遵守する重要性が強調されました。具体例として、リソース削除の明示的なポリシー設定が挙げられ、これにより意図しない削除操作が防がれる仕組みが紹介されました。
Guardツールによるポリシー執行
Guardツールの機能
以下の特徴を持つツールです。
- 任意ルールの定義:特定のポリシーを定義してコンプライアンスをチェック。
- セキュリティ問題の検出:コード内の潜在的リスクを特定し、対処を推奨。
学習曲線の速さ
Guardツールは、短期間での習得が可能な設計となっており、開発者がすぐにルール記述を習得して使用することができます。これにより、迅速な導入と即効性のある効果が期待できます。
CDK統合の具体例
CDKとポリシー執行ツールの連携
AWS CDKは、ポリシー執行ツールと統合することで、セキュリティとコンプライアンスを確保します。たとえば、CDK Synthを使用して生成されたCloudFormationテンプレートが、コンプライアンスチェックに活用されます。
ベストプラクティスの強化
CDKの事前定義ルールやチェック機能により、セキュリティとコンプライアンスを維持できます。これにより、開発者が安心してコードをデプロイできる環境が整います。
継続的デプロイとCI/CDの重要性
インフラストラクチャのコード化とCI/CDの関係
インフラストラクチャをコード化(IaC)することで、CI/CDパイプラインの一貫性と効率性が向上します。コードでパイプラインを定義することにより、レビューやベストプラクティスの遵守が可能となります。
安全チェックの重要性
CI/CDパイプラインでは、安全チェックが欠かせません。以下のプロセスが推奨されました:
- ロールバック:エラー発生時に迅速に元の状態に戻す機能。
- 監視とテスト:デプロイメント中にリアルタイムでシステムをチェック。
自動化と変更セットの役割
プロアクティブなチェック
自動化されたプロアクティブなチェックにより、展開前に問題を特定することが可能です。これにより、運用中のエラーや障害のリスクを最小化します。
変更セットの活用
変更セットは、リソース変更が期待通りであることを確認するために使用されます。この手法は、特に複雑な環境での変更管理において効果的です。
考慮すべき課題
IaCのセキュリティガバナンスを進める中で、同時に、以下の点も考慮しなければなりません。
- コスト削減:リソースの効率的な管理と運用を実現する必要があります。
- リスク削減:潜在的なセキュリティリスクを最小限に抑え、問題発生時の影響を軽減する取り組みが重要です。
- ビジネス成長:安全性を確保しながら、迅速かつ効率的なシステム開発が求められます。
- バランスの維持:安全な速度でシステムを進化させるため、「迅速性」と「安全性」の両立が不可欠です。
特に「Move fast, and stay secure」という考え方が強調されており、迅速なデプロイメントの実現と同時に、堅牢なセキュリティ対策を講じることが重要とされています。マネジメントコンソールの活用においては、セキュリティ上の問題が発生する可能性が指摘され、ツールやプロセスを通じた対策が求められています。
セキュリティを守るためのツール
安全な開発環境を構築し、セキュリティを維持するためには、以下のツールとプロセスの活用が推奨されています。
開発ツール
- コードレビュー:コードの品質を確保し、潜在的な問題を早期に発見する重要なステップです。
- 静的スキャナー:コードを静的に分析し、セキュリティ上の脆弱性やコーディングミスを検出します。
- バージョンコントロール:ソースコードの変更履歴を管理し、変更内容の追跡や復元を容易にします。
- IDEプラグイン:開発環境にセキュリティ機能を統合し、コーディング時にリアルタイムで問題を検出可能にします。
オーサリングツールの活用
開発プロセスでセキュリティと効率を両立させるためのオーサリングツールが以下の通り紹介されました。
- cfn-lint
- CloudFormationテンプレートの静的解析ツール。
- cfn-lintコマンドを用いることで、テンプレートの構文エラーやベストプラクティスのチェックを実行可能。
- cdk-nag
- AWS CDK向けのポリシー執行ツール。
- cdk nag packs で提供されるルールセットを活用し、cdk synthによるテンプレート生成時にセキュリティチェックを実施。
- CloudFormation Guard(cfn-guard)
- CloudFormationおよびCDKに対応するセキュリティルールの適用ツール。
- ルールベースでコンプライアンスとセキュリティ要件の遵守を支援。
- AmazonQ Developer
- 高水準のセキュリティおよび脆弱性修復を実現する開発者支援ツール。
- ベストインクラスのセキュリティ対策を提供し、迅速な問題解決を可能にします。
セキュリティガバナンスの実現には、課題の克服とともに、開発者が安心して作業できるツール群を適切に活用することが鍵となります。迅速性と安全性を両立するため、これらのツールを戦略的に取り入れることが、クラウド環境での成功に繋がると言えるでしょう。
Capital Oneの成功事例
セッションの後半では、金融業界におけるAWS活用の代表的な成功事例として、Capital Oneの取り組みが紹介されました。同社は、以下の方法でセキュリティガバナンスを強化しながら効率的なデプロイメントを実現しています。
- DevOpsの進化
- 従来のサイロ化されたチーム構造を廃止。
- 各アプリケーションチームが独自のパイプラインを構築し、効率的なソフトウェアデリバリーを実現。
- コンプライアンスの分離
- デプロイメントプロセスからコンプライアンスロジックを分離。
- 中央のコンプライアンスプラットフォームに統合し、ポリシーの一貫性を確保。
- AWS CDKの活用
- CDKを導入することで、インフラストラクチャコードの柔軟性を向上。
- EC2インスタンスでのパフォーマンスが最大40%向上する結果を得た。
- 開発者コミュニティの形成
- 開発者がCDKライブラリを活用し、フィードバックを通じて機能追加や改善を推進。
まとめ
このセッションでは、AWSツールとベストプラクティスを活用することで、セキュリティ、ガバナンス、生産性を同時に向上させる方法が明確に説明されました。特に規制が厳しい業界
では、IaCとポリシー執行ツールの導入が不可欠であることが強調されました。企業はこれらの戦略を実践することで、より安全かつ効率的なクラウド運用を実現できます。