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Databricks World Tour Tokyo 2025 現地レポート:データインテリジェンスが企業全体の“働き方”を変える未来

2025年11月28日に開催された Databricks DATA + AI World Tour Tokyo に参加しました。今年は昨年以上に 「データとAIをどう統合し、企業の生産性を底上げするか」 が明確なテーマとなっており、その中心に位置づけられていたのが Data Intelligence(データインテリジェンス) です。

本記事では、特に印象に残った以下のポイントをまとめます。

  • 最近の潮流と課題
  • Data Intelligence Platform(DIP)の全体像
  • Lakebase がもたらすアプリケーション進化
  • Agent Bricks による AI エージェント運用
  • Data Intelligence(AI/BI)の最新動向
  • 国内大企業の最新事例(MUFG / Cosmo Energy など)

 

 

1. 最近の潮流:AI、ガバナンス、モダナイゼーション

AI/生成AIの勢いはさらに加速

企業はすでに“AIを前提に業務を設計し直す段階” に進んでいます。

ただし現場では次の課題が依然として重い状況です。

  • データ利用コストの増大
  • 独自実装(企業内部で構築された独自の仕組み)によるロックイン
  • ガバナンス構造の複雑化

AI導入が進むほど、これらの基盤課題が顕在化している印象でした。

セキュリティとガバナンスの重要性が急上昇

AIが業務へ深く入り込むほど重要になるのが、「誰が・どのデータに・どこまでアクセスできるか?」 の制御です。

この中心に位置付けられていたのが Unity Catalog(UC) でした。

Unity Catalogとは?

Unity Catalog は、Databricks のデータとAI資産を一元管理するガバナンス基盤です。
テーブル・ファイル・ノートブック・MLモデルを統合管理し、権限やリネージを標準化します。
AIエージェントのアクセス制御も担い、安全なデータ活用の要となる仕組みです。
https://www.databricks.com/jp/product/unity-catalog

モダナイゼーションは“データ×AI×アプリ”の一体化へ

これまでの「データウェアハウス刷新」といったレベルではなく、データ基盤 × AI基盤 × アプリ基盤 を一体で再定義する動きが主流になっています。Databricks はこの領域で急拡大し、現在は次のような大規模な組織となっています。

  • 従業員:5,800名以上
  • 顧客:20,000社以上
  • アジアパシフィック社員数:1,000名以上
  • 日本での成長率:80%超
  • アジアパシフィック地域のパートナー数:1,000社以上
 

2. データインテリジェンス時代:Data Intelligence Platformとは?

キーノートで最も強調されたのが “Data Intelligence Platform(DIP)”。これは Databricks が提唱する データ・AI・ガバナンス・エージェント運用を一体化した企業基盤 を意味します。

DIPが解決する課題

企業現場では、以下のような課題が依然として深刻です。

  • 部門ごとにデータが散在し、活用できない
  • AIが必要なデータへ安全にアクセスできない
  • 部門ごとにガバナンスが異なる
  • 高コスト・独自実装ロックインで刷新が困難

DIPはこれらを “まとめて解決する統合アーキテクチャ” として設計されています。

DIPの特徴

  • オープンフォーマットで独自実装ロックインを排除
  • すべてのデータ(構造化/非構造化)を統合
  • Unity Catalog によるガバナンス統一
  • AI活用前提のアーキテクチャ
  • 外部基盤との フェデレーション(連携) を標準サポート

これらにより、「データとAIが常に接続され、企業全体で価値を生み続ける状態」を実現するのが DIP の目指す世界です。

3. Lakebase:アプリケーションが“賢くなり続ける”基盤へ

今年の発表で最もインパクトがあったと感じたのが Lakebase でした。

Lakebaseとは?

Lakebase は Databricks が提供する「レイクハウスのためのフルマネージド PostgreSQL」。
従来分断されていた OLTP(アプリDB)と Lakehouse をシームレスに統合し、
アプリとAIがリアルタイムでつながる次世代アプリ基盤です。
https://www.databricks.com/jp/product/lakebase

AIが直接アプリのデータを書き換える時代へ

会場デモでは、「AIにコーヒーを注文→Lakebase のテーブルが即更新」という未来的なアプリ動作が披露されました。これにより、以下のような従来の制約を一気に解消することができます。

<Lakebaseで解消できること>

  • レガシーアーキテクチャに起因するロックイン
  • ETL/同期コスト
  • リアルタイム反映の限界

この分断を解消し、“アプリがデータを通じて継続的に進化する”という新しい世界観を提示していました。

4. Agent Bricks:AIエージェントの“本番運用”を支える基盤

AIエージェントは急速に広がっていますが、本番運用には課題が多くあります。

  • 精度の揺らぎ
  • コスト管理
  • 想定外動作
  • 業務特化エージェントの乱立

Agent Bricksとは?

Agent Bricks は Databricks が提供する「企業向けAIエージェント運用基盤」。
Unity Catalog と連携した権限管理、スーパーバイザーによるエージェント制御、
コスト・品質の最適化など、本番環境で安心して AI を運用するための仕組みが統合されています。
https://www.databricks.com/product/artificial-intelligence/agent-bricks

<Agent Bricksの特徴>

  • スーパーバイザーによる“マルチエージェント制御”
    複数エージェントを束ね、タスク配分や品質管理を担います。
     
  • ユーザー権限の“代理認証”
    AIエージェントが、SQL実行・ノートブック実行・ジョブ起動を行う際、Unity Catalog のユーザー権限を引き継ぐ ため安全性が高い。
     
  • 自動最適化
    精度・コスト・スキル切替を自動調整し、運用負荷を大きく軽減します。
     

5. Data Intelligenceの実装:AI/BIが組織の意思決定を変える

DIPの概念は「基盤」で終わりではなく、データ活用・BI活用そのものを再定義する取り組み にも展開されていました。

AI/BIの進化ポイント

  • ダッシュボード利用が +500% に増加
  • 自然言語でインサイトを提示
  • “質問を想定して前処理する”従来BIの限界を突破
  • Genie によるデータ対話が中心に
  • 6月発表の Genie Research Agentが「Why/How」を説明できる

Databricks は “データを見る”から“データと会話する”という新しいBI体験へ移行しつつあります。

6. 国内事例:MUFG(三菱UFJ銀行)が語った“AI Ready基盤”

MUFGは Databricks を 全社AI分析基盤 として採用し、強力な成果を示していました。

  • データサイエンティストの生産性:+45%
  • ETL処理時間:55%削減
  • 環境スペック変更:10日 → 即時
  • 基盤コスト:60%削減
  • 環境払い出し工数:90%削減
  • 業務適用:50件超
  • 累計PoC:140件以上

非常に再現性の高い事例で、国内企業の指針となる内容でした。

7. Cosmo Energy:DXは“自分ゴト化”できるか

Cosmo Energyは、組織全体でDX/AI活用を推進していました。

<組織横断の取り組み>

  • DXアンケートによる全社員コミュニケーション
  • 人事と連携したスキル可視化
  • DX研修によるリテラシー向上
  • DXフォーラムでの事例共有

<成功のカギ>

  • 現場と経営、PMO、パートナー、DX/IT部門が近くで協力できたこと
  • OSS志向の高速展開
  • 小さく始めて広げるアプローチ

「AIの価値を阻むのは“慣れたやり方を変える勇気がないこと”」

という言葉が印象に残りました。

8. 総括:2025年は“AIがデータを直接扱う”時代の幕開け

今年のキーノートを通じて明確になったのは、“AIとデータが完全につながるフェーズに入った” ということです。

  • Lakebase によるアプリケーション進化
  • Agent Bricks によるAIエージェント運用基盤
  • Data Intelligence Platform による統合アーキテクチャ
  • Unity Catalog による全資産ガバナンス
  • AI/BI による意思決定の変革
  • 国内大企業の実践事例

2025年は、“AIを導入する年”ではなく、“AIを業務に組み込み、組織が変わる年”として記憶されるかもしれません。

 

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