Active DirectoryのAWS移行を
限られた期間で実現
移行後の運用をKyriosに一元化し、
全体のコストを30-40%削減

 

自動車電装用パワーリレーと電子機器向けシグナルリレーで世界トップシェアを誇るEMデバイス株式会社は、創業以来、Active Directoryを中心とした情報系のサーバを国内の事業者が提供するプライベートクラウドで運用していました。このサービスの提供終了が発表され、同社はAWSへの移行を計画しますが、サービス終了期日が迫る中、当該システム構築時のドキュメントが不足していたことによりプロジェクトは暗中模索状態に。

JTPが提案した、AWS上に新規に基盤とサーバを構築するプランにより、限られた期間でのAWS移行プロジェクトを実現。さらに、同社が導入を検討していたID管理ソフトウェアをAWS Marketplaceから導入することで、導入期間と費用を削減しました。AWS移行後は、同環境の運用をJTPのKyriosで一元化。AWS移行前と比較して全体で30%〜40%のコスト削減を実現しました。

 

EMデバイス株式会社

本社所在地
宮城県白石氏旭町七丁目1番1号

事業内容
車載用パワーリレー・シグナルリレーの開発、製造および販売

「既存環境に関する情報不足や移行スケジュールの制約といった課題があるなかで、積極的なヒアリングや現地調査を実施してもらい、当社の要望や利便性を最大限に考慮された提案をしてくれたのがJTPでした。また、私たちが使いたいと思っていたソフトウェアを、非常に手軽な費用で導入できる方法を提案され、大幅なコスト削減も実現することができました」

清川 敦之 氏

EMデバイス株式会社
ものづくり基盤本部
本部長

課題

導入効果

既存のプライベートクラウドのサービス終了日が迫る中での短期間での移行プロジェクト

既存システム構築時の情報不足により暗中模索が続くAWSへの移行計画

AWS Marketplace利用によるソフトウェアの迅速な導入

ソフトウェアのライセンス費用をはじめとするコストの削減

▮ パブリッククラウド導入による情報システムの革新

電気・電子回路の制御に使われる電気部品「リレー」の開発・製造・販売を専業とするEMデバイス株式会社。同社の主力である自動車向けのパワーリレー、通信・計測機器、医療機器など電子機器向けのシグナルリレー、いずれも世界でトップクラスの市場シェアを誇っています。2017年4月にNECトーキンより分社独立し誕生した同社ですが、リレーの事業自体の歴史は長く半世紀以上の実績があります。同社の製造と販売拠点のほとんどが海外にあることから、ビジネスの大部分が欧州や米国向けとなっており、近年は、中国や東南アジア向けが拡大しています。

現在、同社の情報システム部が取り組んでいる大きなテーマは、2017年の創業以来利用してきたハードウェアやソフトウェアの整備、そしてデータ利活用の推進です。データセンターでハウジングしていた基幹システムのハードウェアとOSのサポート終了をきっかけとして、パブリッククラウドの利用が始まりました。同社のものづくり基盤本部 本部長の清川 敦之 氏は、情報システム部を統括する立場として「クラウドやSaaSの利用はあくまでも選択肢の一つであり、利点と欠点を踏まえて、最終的にクラウドという判断になっている」と話します。

▮ AWS採用決定とActive Directoryの移行計画

基幹システムのクラウド移行が進む中、Active Directoryを中心とした情報系のサーバを運用していた国内の事業者が提供するプライベートクラウドのサービス終了が発表され、提供終了日である2023年12月1日までに移行・撤去を完了させなければならなくなりました。これにより、同じ事業者が提供する後継サービスかパブリッククラウドのどちらかに移行する決断を迫られ、2022年の末ごろから検討を開始します。結果として、先行して基幹システムを移行していたAWS(アマゾン ウェブ サービス)の採用が決まりました。

「Active Directoryを利用する上で確かに便利そうなクラウドサービスはいくつかあったものの、すでに基幹システムをAWSに移行していたので、今回もAWSを採用しました。他のサービスの場合は、今までとは考え方が全く違うため難しさを感じました。AWSなら、仮想マシンを建ててActive Directoryを入れるという流れになるので、ハードウェアが仮想に変わっただけと考えることができました」

当初は移行プロジェクトを内製する想定でしたが、既存の環境に関する情報が不足しており、移行計画の立案が難航したと言います。

「既存のActive Directoryは、2017年の創業時に親会社であるNECトーキンが準備してくれたものでした。しかし、構築に関するドキュメントがあまり残っていなかったうえに、システムの引き渡しを受けたメンバーがほとんど退職してしまっており、現在、私たちのグループの中に当時を知るメンバーは誰も残っていなかったのです。私自身、ITに関わり始めて20~30年で、海外拠点でActive Directoryを立ち上げたこともありました。他にもITベンダーから中途入社したメンバーもいるので自分たちで何とかなると考えていたのですが、やはり情報不足により、手探り状態が続きました」

▮ JTPの提案でAWS Marketplaceを活用、ソフトウェアライセンス費用を削減

Active DirectoryのAWS移行について複数のベンダーに相談したものの、情報不足やスケジュールの制約から、実現性のある提案はほとんどなかったと言います。そんな中、同社はアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の担当者からJTPを紹介されます。JTPは、既存のA Dサーバおよび機能と連携している他のサーバ、機器、アプリケーションなどに関するヒアリングと現地調査を行い、既存環境への影響を考慮した段階的な移行計画を策定。そして、サーバの役割を踏まえたリソース占有化や問題発生時の切り分けを考慮し、元々の3台構成から2台構成への変更を提案しました。ADサーバについては、マルチAZの構成としてAZ単位での耐障害性を高め、セキュリティ面でAWSのベストプラクティスをもとに、同社の要望や利便性とのバランスを考慮した構成としました。さらに、同社が新規に導入を検討していたActive Directory ID管理ソフトウェアについては、パッケージライセンスの購入ではなく、AWS Marketplace(*¹)からの利用を提案し、より簡素化された実装とソフトウェア調達コストの削減を目指しました。

*¹:ソリューションを構築してビジネスを実行するのに必要な純正品以外のソフトウェアやサービス、データなどを、検索・購入・管理できるツールを提供しているオンラインストア

「AWS Marketplaceからソフトウェアを利用する方法があることは、JTPからの提案で初めて知りました。従来は高額な年間ライセンスや永続的なライセンスを買ってサーバにイントールする必要がありましたが、AWS Marketplaceではソフトウェアについても時間単位の貸し出しでリーズナブルに利用できます。他社からの提案では、パッケージライセンスの選択肢しかありませんでしたが、JTPはAWS Marketplaceの提案により、巨額なライセンス料を支払わずに手軽にソフトウェアを導入することができたので、感謝しています」

JTPへの正式な発注が決まり、プロジェクトがスタートしたのは2023年9月。既存のプライベートクラウド上の環境の移行・撤去期限までは、残り3ヶ月でした。基盤構築に2ヶ月、Active Directoryの移行に2ヶ月半、既存スクリプトの修正と移行に2ヶ月の作業を並行して進め、11月末のデッドラインまでに移行を完了しました。既存のプライベートクラウドの利用は11月末日で終了し、計画通り12月1日からAWS上での運用が開始されました。清川氏は、プロジェクトの成功要因としてJTPのプロジェクトメンバーの新しいテクノロジーに対する敏感さを評価します。

「提案内容や実際の作業の様子から、通常の業務をこなすだけではなく、様々なことにアンテナを張って情報のキャッチアップやチャレンジしているエンジニアが揃った会社であることが分かりました」

▮ 新しいActive Directoryの運用業務をKyriosで一元化

同社は、今回AWS上に構築した基盤の監視・アラート・障害対応、そして、このAWS上のActive Directoryの運用業務にJTPのクラウド運用サービス Kyriosを採用。複数ベンダーに分散していた運用業務を一元化しました。Kyriosは、Active Directoryの運用業務におけるユーザ登録作業、コンピュータアカウント登録作業、グループポリシーの登録作業、監視、バックアップと復元、障害対応をカバーしています。Kyriosでの運用について清川氏は次のように評価します。

「Active Directoryをプライベートクラウドで運用していた時は、こんなに多くのレポートが上がってくる状態ではなく、定期的な打ち合わせもありませんでした。JTPの運用は非常に手慣れており、工夫して対応してくれていると感じます。費用も以前と比べて大幅に削減されました。」

▮ 30〜40%のコスト削減に繋がったAWS移行、そして今後の展開

今回、AWSに移行したActive Directoryは、大きな問題もなく安定して稼働しています。また、移行後の成果として一定のコスト効果は現れており、社内からの評価も得られるといると言います。

「以前利用していたプライベートクラウドには、クラウドに加えて一般のネットワーク回線の費用も含まれていました。保守の体制も異なるため、移行前と移行後を単純に比較することは難しいのですが、全体でみると30〜40%のコスト削減に繋がっているのは確実です。社長も『意外に安いね』と費用面で満足しています。また、AWS Marketplaceから利用しているID管理ソフトウェアの月ごとの請求金額も、通常の年間ライセンスを買うことを考えると、大幅に抑えることができています」

今後の展開として、AWSに移行したActive Directoryでは海外拠点への統一したポリシーの適用、クラウド活用という点では資産を持たないITの推進だと清川氏は話します。

「海外の各拠点からActive Directoryを使って共通のドメインにログインさせたいと考えています。現在、拠点ごとに個別のサーバを持っており、それぞれが独自に運用されています。Active DirectoryはAWS上で稼働しているので、海外拠点からもAWSに接続してもらって、こちらのサーバで認証を行う方法に変更したいと考えています。また、ITについては、ハードウェアを保有しない方針で、基本的に資産を持たずにITを運用していきたいです」

▮ 間接部門のコンパクト化だけではない、「持たないIT」だからこそできる新しいチャレンジ

最後に、清川氏は今後パブリッククラウドの活用を検討している方向けに「持たないIT」、特に、ソフトウェアを資産として持たずに使うことのベネフィットを強調します。

「クラウドの費用はオンプレミスで償却していくのとあまり変わらない気もしますが、専任の人を社内に置かなくて済みますので、その分経費を抑えることができます。特に私たちの会社では社員の大部分は現場での作業者ですから、間接部門はコンパクトにすることが求められます。売上高や社員数などに依存するとは思いますが、やはり『持たない』と言う考え方は重要であり、ハードウェアだけでなくソフトウェアにも言えると思います。AWS Marketplaceは今回初めて利用しましたが、他にもいい面白そうなツールがたくさん提供されています。例えばBIだと通常のライセンス料はかなり高額ですが、AWS Marketplaceで安く試せるのであれば、多くのチャレンジが可能になります」

JTPでは、長年に渡るクラウドの構築と運用実績を通して育まれたベストプラクティスを集結し、今後もEMデバイスのビジネスをサポートしていきます。

本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標の場合があります。
この事例に記載された内容は2024年2月現在のものです。

RELATION

関連記事

CONTACT

クラウド活用でお悩みの方は、お気軽にご相談ください

ご不明な点はお気軽に
お問い合わせください

サービス紹介資料は
こちらから