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MLOpsエンジニアリングの導入 | AWS re:Invent 2024 現地レポート

AWS re:Invent 2024のセッション、「Introduction to MLOps engineering on AWS」の参加レポートをお届けします。このセッションでは、機械学習(ML)ワークフローに、DevOpsスタイルのアジリティを取り入れる「MLOps」について紹介されました。特に、データエンジニア、データサイエンティスト、ソフトウェア開発者、運用チーム間の課題を克服するためのツールや自動化、プロセス、チームワークの重要性が強調されました。


MLOps(機械学習オペレーション)とは

機械学習は、約75〜80年の歴史を持ち、私たちの日常生活に多くの影響を与えています。例えば、アプリケーションの推薦システムや金融取引における不正検出など、さまざまな分野で利用されています。これらの技術は、データを活用して予測や判断を行う能力を持ち、ビジネスの効率化やユーザー体験の向上に寄与しています。

MLOpsの定義

MLOpsは、機械学習モデルを長期間にわたって生産環境で作成し、維持するための実践を指します。これは、モデルの構築や訓練だけでなく、必要に応じてデプロイ、監視、再訓練を行うことを含みます。MLOpsは、機械学習パイプラインの各ステップを自動化し、効率的な運用を実現するための重要な役割を果たすためめの、ライフサイクル全体を管理するフレームワークを提供します。

MLOpsにおける自動化

MLOpsでは、機械学習パイプラインのさまざまなステップ(データ収集、前処理、モデル訓練、評価、デプロイ)の自動化が強調されました。自動化は、モデルの効率的な維持を助け、開発者がより迅速に価値を提供できる環境を整えます。

実際のアプリケーションにおいて、MLOpsは推奨システムや不正検出モデルなどで活用されています。これらのモデルは、日常のアプリケーションでの機械学習の利用方法を示しており、常に最新かつ正確であることが求められます。

MLOpsを導入するために考慮すべきこと

スキルセットの要件

MLOpsには、いくつかの課題が存在します。まず、必要なスキルセットが多様であることが挙げられます。データサイエンティスト、DevOpsエンジニア、ガバナンスオフィサーなど、異なる専門知識を持つ人々が協力する必要があります。

ガバナンス

MLOpsにおいては、コンプライアンス、データ保護、透明性を確保するためのガバナンスが不可欠です。機械学習モデルを効果的に管理するためには、標準化された文書やプロセスが必要です。これにより、組織全体での一貫した運用が実現します。

組織構造

MLOpsの実践に合わせて組織の構造を再編成することも重要です。これには、機械学習オペレーションを管理するための新しい役割やチームの作成が含まれる場合があります。組織がMLOpsを成功裏に実装するためには、柔軟な構造が求められます。

モデルライフサイクル

各機械学習モデルには、データ収集、モデル訓練、評価、デプロイ、監視といった独自のライフサイクルがあります。これらの段階を理解し、適切に管理することがMLOpsの成功に繋がります。

データ品質の重要性

データの品質対量

機械学習において、データの品質は非常に重要です。正確な予測を行うためには高品質なデータが不可欠であり、大量のデータよりも、代表的で高品質なデータを持つことが重要です。高品質なデータは、機械学習モデルが正確な予測を行うための基盤となります。

データ収集とクリーニング

機械学習エンジニアの作業の大部分は、データ収集とクリーニングに費やされます。このステップは、モデルの訓練に使用されるデータが高品質であることを保証するために不可欠です。データのクリーンアップにより、モデルの精度を向上させることができます。

特徴エンジニアリング

特徴エンジニアリングは、未加工データを予測モデルに対して問題をよりよく表現する特徴に変換するプロセスです。このステップは、モデルの予測力を向上させるために不可欠です。適切な特徴を選択することで、モデルの性能を大幅に向上させることが可能です。

モデルの訓練と評価

モデルの訓練と評価は、機械学習プロセスの重要な部分です。データをモデルに投入してパターンを学習させ、特定の業界やワークロードに基づいてモデルの精度を評価します。異なる業界では、モデルに対して異なる精度要件が設定されるため、業界ごとの要件を理解することが重要です。


訓練プロセス

モデルの訓練は、データをモデルに投入してパターンを学習するプロセスです。このステップは、モデルが正確な予測を行うために非常に重要です。訓練プロセスを最適化することで、モデルの精度を向上させることができます。

評価指標

モデルのパフォーマンスを評価するためのさまざまな評価指標(精度、適合率、再現率、F1スコアなど)についても議論されました。評価指標の選択は、特定の業界やアプリケーションに依存します。適切な指標を使用することで、モデルの性能を正確に評価することができます。

業界別要件

各業界はモデルに対して異なる精度要件を持ちます。例えば、エンターテインメント業界では60〜70%の精度が許容されることがありますが、医療や金融の分野では90%以上の精度が求められます。このような業界特有の要件を理解することが、モデルの設計や評価において重要です。

モデルの再訓練

モデルが時間とともに正確であり続けるためには、定期的にモデルを再訓練する必要があります。新しいデータでモデルを更新し、そのパフォーマンスを再評価することが含まれます。再訓練を行うことで、モデルの精度を維持し、環境の変化に適応させることができます。

MLOpsにおける人々の役割

データサイエンティスト

データサイエンティストは、データの収集、クリーニング、分析を担当します。また、機械学習モデルを構築し、訓練し、使用されるデータが高品質であることを保証する役割を果たします。彼らの専門知識は、MLOpsの成功に不可欠です。

ガバナンスオフィサー

ガバナンスオフィサーは、機械学習モデルが規制や標準に準拠することを保証します。データ保護、プライバシー、透明性を管理し、モデルが倫理的かつ合法的に使用されることを確保します。彼らの役割は、組織の信頼性を高めるために重要です。

DevOpsエンジニア

DevOpsエンジニアは、機械学習モデルを生産環境にデプロイし、維持する責任を持ちます。モデルがスケーラブルで信頼性が高く、さまざまな条件下で良好に動作することを保証します。彼らの技術的なスキルは、MLOpsの効率性を向上させるために不可欠です。

協力とコミュニケーション

チームメンバー間の協力とコミュニケーションの重要性も強調されました。効果的なコミュニケーションは、全員が目標とプロセスに一致し、成功したMLOpsの実装をもたらすために不可欠です。チーム全体が同じ方向を向くことで、プロジェクトの成功が促進されます。

MLOpsにおける技術

技術選択

MLOpsのために適切な技術を選択することは非常に重要です。一貫性、柔軟性、スケーラビリティを持つ技術を選ぶことで、機械学習ライフサイクル全体をサポートできます。選択された技術は、データ収集からモデルデプロイまで、全体を一貫して管理する必要があります。

Amazon SageMaker

Amazon SageMakerは、機械学習タスクの管理のための包括的なツールとして紹介されました。SageMakerはデータ収集、前処理、モデル訓練、デプロイ、監視の機能を提供し、MLOpsのための一括ソリューションとなります。このツールを活用することで、開発者は効率的に機械学習モデルを構築し、運用することができます。

成熟度モデル

MLOpsの成熟度モデルは、初期段階からスケーラブルな段階までのプロセスを示しています。初期段階では手動プロセスが多く、スケーラブルな段階では自動化とガバナンスが強化されます。このモデルを理解することで、組織は自社のMLOpsの成熟度を評価し、改善点を見出すことができます。

DevOpsとMLOpsの違い

セッションの中では、DevOpsとMLOpsの違いについても強調されました。

DevOpsはソフトウェア開発とIT運用の統合を目指し、コードのデプロイメントやインフラストラクチャの管理に焦点を当てています。一方、MLOpsはDevOpsの拡張であり、データと機械学習モデルの管理も含まれます。特に、モデルのトレーニング、デプロイメント、監視、再トレーニングなどのプロセスを自動化し、データのバージョン管理やモデルのバージョン管理も行います。

結論

今回のセッションでは、MLOpsの重要性とその実践におけるさまざまな側面について深く掘り下げました。機械学習の運用を効率化し、データとモデルの管理を適切に行うためには、組織全体での協力とコミュニケーションが不可欠です。また、適切な技術選択やガバナンスの確立も重要なポイントです。AWSの提供するツールを活用し、MLOpsを効果的に実践することで、ビジネスにおける競争力を高めることができると感じました。

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